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2018年12月

2018年12月30日 (日)

『鳥説』-ご紹介

  私に入門書の紹介をする資格はありません。
 というか、バードウォッチングの入門書の書評は難しいです。入門書の評価は、初心者に理解できたか、鳥がわかるようになったか、バードウォッチングを続けることができたかで価値が決まると思います。私みたいな人間が、初心者だった頃を思い出しながら読んでもなかなか評価できません。当然のことながら、逆に初心者は入門書を評価する立場にないのですから、意見を表明する機会がないのです。
 ♪鳥くん(永井真人)さんの前著『鳥さんぽをはじめよう』は、けっこう無理矢理、紹介させてもらいました。
  http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2017/11/post-8ce6.html
 そして、今回の『鳥説』は、入門書ではあるけれど、対象は中級以上、ある程度の経験を持ったバードウォッチャーが、よりバードウォッチングを深めようとしたときに読む本だと思いました。ですから、私が評価してもよろしいかと思います。

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 入門書ですからわかりやすさが信条です。内容に関連した写真がたくさん掲載されていてわかりやすい構成です。また、この手の本には欠かせない富士鷹なすびさんのイラストが、ずいしょにあるので楽しく読めます。
 解説されているのは、バードウォッチングの方法はもとより、珍鳥の見つけ方、なかでも野鳥写真の撮り方については複数の項目がついやされています。さらに野鳥との接し方についても、マナーを含めて言及されています。
  国内外でバードウォッチングを楽しんでいる筆者ならではの実話がちりばめられているのですから、実戦的な知識と情報を得られます。そのコツ、なんと合計115個載っているのですから役に立つことは間違いありません。
 バードウォッチングの初心者を卒業して、もう一歩極めたい方におすすめの1冊です。 

2018年12月29日 (土)

枯れ葉が落ちて-六義園

 六義園は今日から来年の元旦まで、休園となります。昨日、六義園でのバードウォッチング納めをいたしました。最後を飾ってくれたのは、小鳥の群れです。シジュウカラ、エナガ、メジロ、キクイタダキ、コゲラが群れとなり、総勢では50羽を超えていたでしょう。観察していると、シジュウカラが鋭い声を上げて私のすぐそばを飛んでいきました。あまりない体験なので不思議に思っていたら、上空をオオタカが飛んでいきました。シジュウカラは、オオタカを警戒しての行動だったようです。
 やっと木枯らしが吹いたので、樹木の葉がすっかり落ちました。葉が落ちたら、ハシブトガラスの巣が2つ、姿を現しました。今年は5個の巣を見つけていましたが、この2つは未発見のものです。六義園では巣落としをしていますので、業者も見つけられなかったものでしょうか。それとも作り直しをしたものなのでしょうか。
 いずれの巣の周辺でも夏に警戒されることはありませんでした。また、幼鳥の出現はなく、子育てに成功したとは思えません。
 六義園の東側にあった巣です。東側は、マンションが壁のように並んででいるので、ベランダのハンガーを持ってきて使っています。巣の下の方に白いハンガーが見えます。

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 西側の巣です。西側は、お屋敷が多いのでハンガーを放置するような家はないのか、人工物が使われていません。 

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2018年12月27日 (木)

デジスコ通信に投稿-見えないものが見える目

 K極さんは、奥日光の登山道を歩いているときに「サルの臭いがする」と教えてくれました。彼は若い頃、下北半島で北限のサルを追いかけていました。
 同じく日光で、林道に車を止め下りたとたん「タヌキの臭いがする」と言ったのは、K沢♀さんです。彼女は、六義園にカラスの調査に来たときも同じように教えてくれました。当時は、六義園でタヌキの記録はなかったのですが、しばらくして姿を見つけることができました。
 このようにベテランのナチュラリストが生き物を見つける五感、超能力のようです。私の自然仲間には、いろいろな生き物に詳しい人がいて、同じように見つけてくれます。
 どうしたら、そうした能力を身につけることができるのか。デジスコドッドコムの「デジスコ通信」に投稿いたしました。
 http://www.digisco.com/mm/dt_110/toku1.htm

2018年12月22日 (土)

モマ笛の音色

 S田さんの奥様から、思わぬクリスマスプレゼントをいただきました。
 モマ笛です。
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 なんとも愛嬌のある顔をした笛です。九州の筑前津屋崎人形です。
 モマとは、津屋崎でフクロウのことだそうです。光の道で有名な宮地嶽神社の縁起物として昔は授与されていました。なんと、このモマ笛の起源は安永の頃(1777)にまでさかのぼり、昔はお年寄りが食事のたびにモマ笛を吹くと気道が広がるので食べ物がのどにつまらないという効果があったとか。誤飲性肺炎にならないためには、モマ笛を吹いてから食事をしたほうが良いということでしょうか。
 フクロウの方言名でモマというは聞いたことはありませんでした。マオ、あるいはマオドリは、アオバト説が有力です。鳴き声が由来であると言われています。
 モマも同じように低い声で鳴くフクロウ類に由来するのでしょうか。
 ということでさっそく吹いてみました。たしかに低い丸みのある音で、フクロウ類の鳴き声に似ています。
  九州北部で繁殖しているフクロウ類は、フクロウ、トラフズク、オオコノハズク、コノハズク、アオバズクです。フクロウの「ホホ」は出せても「ゴロスケホーホー」の複雑な節回しは、一音だけでしか出せない笛では無理でした。同じく、「ブッポウソウ」と鳴くコノハズクもできません。
 単調な声で鳴く種類では、トラフズクがいます。残念ながら、トラフズクのほうが音が低く、音色が違いました。さらに、オオコノハズクもより音が低く、かなり印象が違って聞こえます。
 九州地方では比較的多いアオバズクはどうでしょう。2音ずつ吹くと、音色も雰囲気もよく似ています。モマ笛でアオバズクの鳴き声のように吹いてみました。

「moma151222.mp3」をダウンロード

 いかがでしょうか。けっこう似ているでしょう。
  どれだけ似ているのか、声紋で比較してみました。
 まずは、本物のアオバズクです。『鳴き声ガイド日本の野鳥』に収録されているものから声紋を採りました。

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 つぎに、モマ笛です。

Moma181222

 音の高さが600Hzにあることが共通しています。また、山型のパターンの声紋と1,200Hzあたりに倍音が出ることも似ています。モマ笛は、アオバズクの鳴き声に近いですね。
 ちなみに、アオバズクの鳴き声には個体差があって、多少音の高さやテンポが違ることはありますので、もっと違う感じから、もっとそっくりがあるかもしれません。
 そういえば、フクロウならば笛の色は灰色系になりますが、アオバズクの色のように茶色に塗られています。頭の丸みもアオバズクを彷彿させますね。
 モマは、アオバズクのことなのでしょうか。およそ250年前の地方名の検証となると、深すぎてこれはお手上げですが、楽しい謎解きです。
 S田さん、貴重な笛のプレゼントありがとうございました。

2018年12月21日 (金)

ミサゴ-芝川第一調節池

 今年最後の好天、暖かい日になるかもと思い、芝川第一調節池に行きました。
 天気予報通り、雲一つ無い青空が広がっていました。

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 ちょっと霞がかかり、暖かさと相まって春のようです。この季節は、いつもならばカラッ風が吹いている芝川ですが、とても12月下旬とは思えない陽気です。
 おかげで、鳥たちの活動が活発でした。芝川には、ここ数年通っていますが、鳥たちの顔ぶれが変わっていくのが面白いです。今日は、カモ系が少なくて、コガモの声は聞こえず、オカヨシガモも見つけられませんでした。キンクロハジロも確認できず。遠くにいたのが、キンクロハジロかもしれません。以前は池のあちこちにいて、近くにいるものを確認できたのですがいませんでした。多かったカイツブリとオオバンが減った感じです。
 増えたのは、カンムリカイツブリとミコアイサ♀が目に付きました。アオサギとダイサギも多く、あまり鳴かないサギ類ですが、声がよく聞こえました。あとのミサゴの出現も含めて、共通するのは魚食の鳥たちが増えた印象があります。
 チュウヒは相変わらずで、カメラマンのオジさんたちも忙しそうでした。
 ヨシ原のほうからは、クイナのさえずりと言われている声が聞こえ、クイナも健在でした。
 シートを敷いて座って、ゆっくりと日向ぼっこをしていると、まるで露天風呂に浸かってバードウォッチングをしているかのよう。至福の時です。
 そろそろ帰ろうとすると、上空にミサゴが出現。池の上に来るとダイビング、一発で魚を捕らえました。

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 そのあと、捕った魚を見せつけるかのように上空で旋回を繰り返し、上昇していきました。今日のバードウォッチングは、まるで釣り番組のように、最後に大物が撮れました。

2018年12月19日 (水)

『朝の小鳥』スタジオ収録-1月はカモの仲間

 今日は、文化放送にて『朝の小鳥』のスタジオ収録でした。
 収録に先だって雑誌『清流』の取材を受けました。引き続き、スタジオ風景も取材されてました。この雑誌のキャッチフレーズは「主婦たちに贈る心のマガジン」です。そんな雑誌にオジさんが登場して良いのかと思いましたが、私以前に日本野鳥の会の柳生会長や職員も取材していてました。それだけに、ライターさんは拙著を読み、ブログもチェック済み。インタビューの質問は、適切でこんな答えやすいインタビューを受けたのは久しぶりです。掲載は4月号とのことですので、ご興味のある主婦の皆さん、ぜひご覧いただければと思います。
 さて、番組のほうは、冬の鳴き声の端境期を迎えて企画に苦労いたしました。新年は、冬らしくカモ類でスタートです。さらに正月は、オシドリがです。また2015~2016年に荒川に飛来したハクガンは、5回も取材に行っているのに、まだ番組に登場させていませんでした。置いた録音機のそばで、鳴き合うハクガン3兄弟の声をお聞きいただければと思います。
 いずれにしても、冬の音の魅力が伝われば幸いです。

2019年1月 放送予定
6日 オシドリ
13日  ハクガン
20日  コガモ
27日  クロガモ

2018年12月16日 (日)

今年はアトリの当たり年?-日光

 昨日まで日光に行っていました。
 昼間の日向で風が当たらなければ暖かです。先日、降った雪も山間にわずかに残る程度でした。静かな初冬の日光でした。
 面白かったのは、日光駅周辺など市街地では、カワラヒワの群れがたくさん飛んでいました。だいたい100~50羽の群れがたえず行き交い、遠くを1,000羽くらいの群れが山を越えていきました。
 また、市街地をはずれた別荘地では、アトリの群れが飛んでいました。こちらも100羽程度の群れがいくつも飛び交っていて、合計すれば500羽を超えていたかもしれません。頭の上を飛んでいくときの鳴き合う声です。PCM-D100で録音、ボリュームのアップ、ノイズリダクションをかけています。

「Brambling181213_001.mp3」をダウンロード

 これでも100羽を超える群れなのですが、鳴き声が小さいので思うように録音できません。アトリの録音は、けっこう難しいです。今年は当たり年のようですから、良い音が録れることを期待しています。

2018年12月12日 (水)

時報のある生活-リズム時計の「四季の野鳥」

 「ピッピッピ、ポーン。3時をお知らせいたします」
 昔は、定時になるとテレビ画面に時計が映って秒針が重なり、時報が鳴りました。また、家には柱時計があって、3時ならば3回「ボーンボーンボーン」と鳴り、「おやつの時間だ」と子ども心にわくわくしたものです。

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 (水上清一さん制作のハシブトガラスのバードカービングと撮りました)

 今は、時間を知りたければスマホを見ます。こうして原稿を書いているときも、コンピュータの画面の片隅に表示もされています。ですから、今何時か知ろうと思えば、苦労することなく時間がわかります。
 しかし、定時の時報はなくなりました。
 アナログの柱時計は、夜中も鳴るので目が覚めると言うことで、壊れたことをきっかけになくなりました。いつの間にか、テレビの時報がなくなりました。BS放送開始当時、時報が微妙に遅れることが気になっていました。さらに、デジタル放送では圧縮された情報を解凍しているのでタイムラグが生じ、正しい時刻を伝えられなくなったためだそうです。それ以前に、民放では定刻を無視して、ドラマやニュースが始まることもあります。
 いずれにしても、「ピッピッピ、ポーン」も「ボーンボーンボーン」も今や懐かしい音となりました。
 リズム時計工業株式会社と日本野鳥の会がコラボして野鳥の鳴き声が聞こえる掛け時計「四季の野鳥」が家に来てから、定時の時報を聞くようになりました。もちろん、「ボーンボーンボーン」でなくて鳥の鳴き声が定時を知らせてくれるようになりました。午前11時だとわかれば「午前中、もう少しがんばるか」と思いますし、午後4時ならば「そろそろ夕方の散歩に行こうか」となります。ちなみに、部屋の明かりが消えれば、センサーが働いて鳥が鳴くことはなくなりますので、昔の柱時計のように起こされることはありません。
 いずれにしても、定時の時報があるおかげで、生活にメリハリができることがわかりました。
 ご参考までに以前の記事です。
  http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2018/10/post-47c0.html

2018年12月 8日 (土)

蓮尾純子さんの講演会-リトルターンプロジェクト

  本日は、大田区蒲田で行われた蓮尾純子さんの講演会「新浜から~行徳野鳥観察舎がたどった道」に行って来ました。
 リトルターンプロジェクトは、東京都森ヶ崎水再生センターの施設屋上で繁殖しているコアジサシの保護を行っているボランティアグループです。若い方が多く参加している注目の集団です。それだけに、若い人ばかりだろうから年寄りは部屋の隅でじっとしていようと出かけました。会場には70人ほど集まっていました。若い人が目立ちますが、思いの他、旧知の仲の友人知人も来ていてご挨拶に時間がかかってしまいました。ただ、蓮尾さんのことを”オスミ”と呼ぶような先輩諸氏は誰もきていませんので、少しほっと・・・。
 私は蓮尾さんにたのまれて行徳では5、6回講演を行っています。しかし、考えてみると蓮尾さんのお話を聞くことは、これで2回目。貴重な機会です。
 蓮尾さんがはじめた新浜を守る会の運動は、1960年後半からわき起こった自然保護運動の先駆けとなりました。そのおかげで、蓮尾さんのいらした行徳野鳥観察舎のみならず、谷津干潟、三番瀬、葛西臨海公園、東京野鳥公園といった東京湾の野鳥の楽園が、残ったことになります。今こうしたところでバードウォッチングを楽しめるのは、蓮尾さんのおかげです。そして、何より喜んでいるのは野鳥たちでしょう。
 個人的には、高校時代に蓮尾さんに手紙を書いたことがきかっけで、今のような立場になったのですから、私にとっても大恩人です。
 それだけに、話の流れ、言葉の一つ一つに重みを感じました。

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 相変わらずのお元気な姿、これからも野鳥たちのためにがんばっていただければと思います。
  

2018年12月 4日 (火)

ハジロカイツブリ-葛西海浜公園

  昨日、葛西海浜公園で新聞の取材を受けました。
 葛西海浜公園がラムサール条約の登録湿地になったこともあって、2月の『朝の小鳥』では葛西の鳥たちを取り上げたいと思い野鳥録音も兼ねての葛西訪問でした。
 カメラマンの方も同行して鳥の写真を撮ったり、ヨシ原とカワウの群れの向こうにそびえ立つお城の風景に感動していました。昨日は暖かく、春霞のかかった早春の海の風景が広がっていました。風がなかったので静かな波音が聞こえ、西なぎさと東なぎさの間の水路にいるハジロカイツブリが意外と近くで鳴いてくれました。
 しかし、いろいろ話が盛り上がったために録音は断念。本日、波音とハジロカイツブリの鳴き声を録音するために、改めて葛西に行きました。
 今日は昨日に加えての暖かさ、いや暑さです。昨日が早春の暖かさならば、1日でいっきに初夏の暑さになった感じです。こんな暑さのなかでスズガモを見たことがあったでしょうか。ツバメが飛んでコアジサシが飛び交っても良いような陽気でした。
 幸いなことに風もほとんどなく、しずかな波音を録音することができました。
 また、ハジロカイツブリは10羽ほどが同じ所にいて、さかんに潜水していました。ときどき「ピッ」という声が聞こえますが、思いの他小さな声です。以前、50羽ほどの群れが追い込み漁をやるときに鳴き合うのを録音したことがあります。このような時は深いところでやるのでどうしても海岸から距離があって、かすかに聞こえる程度です。
 今回は近いことは近いのですが、声が小さいのでなかなか難題の声だと思いました。
 PCM-D100で録音。ハジロカイツブリの鳴き声の部分のみ中執、ノイズリダクションをかけて、波音をミキシングしてみました。
「Black-neckedGrebe181204mix.mp3」をダウンロード

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