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2019年12月 7日 (土)

カモ類の変遷を古い絵はがきから探る-六義園

 今年は、六義園に渡来するカモ類は、ここ数年では多いほうです。
 写真は、昨日の吹上浜から見たようすです。キンクロハジロが優占していて、ホシハジロが混じり、マガモが多めでハシビロガモもいます。カルガモは、紀ノ川のほうに10数羽いて、合計で100羽前後になります。
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 これでも、かつてのキンクロハジロの最多数2,570羽(1989年12月2日)に比べれば、寂しい感じがします。そのときは、この水面がキンクロハジロで真っ黒となり、マガモやオナガガモは芝生の上に追いやれていました。
 当時は、キンクロハジロが多かった上に東京湾での銃猟が行われており、狩猟解禁の11月中旬より急激にふえるために内陸に避難してくるのではないかと推測していました。
 鳥の記録のある戦後だけでも、優占種がヒドリガモ→オナガガモ→キンクロハジロ→カルガモ、そして現状のキンクロハジロと変化しています。
 戦前の状況は、どうだったのか記録がないだけに推測するしかありません。
  以前、六義園の開園当時の古い絵はがきをネットオークションで手に入れました。
 岩崎家から東京市(当時)に寄付され開園したのは、1938(昭和13)年10月16日ですから81年前のこと。開園を記念して作られたとされている絵はがきは、現在3種類見つかっています。写真は、開園当時のものと考えて良いでしょう。いずれも池を中心に撮影されていますので、カモが写っていないかチェックしてみました。
 
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 1枚目は、昨日撮影したところの反対側から写した吹上茶屋を中心にしたアングルです。今もある大イチョウは空が透けて見えますから、落葉しているので秋から冬です。しかし、カモの群れは写っていません。ちょうど、吹上茶屋の前あたりに2つ水面に浮かんだものが見えますがカモでしょうか。少なくともカモの群れはいません。

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 2枚目は、昨日撮影したところとほぼ同じところからやや左にアングルをふって撮影されています。奥の建物は心泉亭ですが、建物は今より小規模です。多くの木々が茂って見えるほか、手前のヨシが芽吹いてきているのがわかります。現在ですと、4月下旬から5月初旬の感じです。キンクロハジロの終認は比較的遅く、連休過ぎのこともありますので、いれば写っている可能性があります。しかし、それらしい姿はありません。

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 3枚目は、出汐湊から中之島に渡る仙禽橋を中心した風景です。手前や右奥にある何本もの頬杖で支えられたクロマツは、今はありません。この風景から季節を推し量るのは難しいですが、木の茂り具合、芝生に落とすクロマツの影の濃さから初夏から夏の印象です。もし、カモがいたら繁殖の可能性のあるカルガモですが、残念ながら写っていませんでした。
 たった3枚、冬らしい風景は1枚ですから、そこから戦前の六義園にはカモ類はいなかったと結論つけることはできません。しかし、当時の東京のカモは少なかったのではないという話を次回は上野不忍池で検証してみます。(つづく)

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