『鳥はなぜ鳴く?ホーホケキョの科学』-増刷御礼・その5
それから11年後の1891(明治24)年、はじめて日本人による日本産鳥類のリストが発表されます。
飯島魁(1861~1921)による『日本の鳥目録(Nipon no Tori Mokuroku)』(飯島魁・1891)です。およそ130年前になります。
飯島さんの肖像写真です。昔の方は、皆りっぱな風貌をしています。
このリストは、日本動物学会誌に連載されたもので、33ページ403種類がリストアップされています。和名も表記、ただしこれもローマ字、ウグイスはUguisuです。しかし、不思議なことにこのリストには、なんとコウグイス(Ko-Uguisu)も載っていました。
飯島さんは、のちに東京大学(当時は帝国大学)の動物学教室を中心に日本の鳥類学の礎を築いた方です。日本鳥学会の初代会長にもなり、教え子には山階芳麿、黒田長禮、内田清之助、蜂須賀正氏、鷹司信輔といった日本の鳥学を支えた大御所がずらっと並びます。山階さんには、以前の勤め先の会長で、孫のように接してもらいました。中学高校時代は、内田さんのエッセイを読んで勉強しました。蜂須賀さんの本もわくわくした読みました。黒田さんの本は今でもネタ本です。鷹司さんは明治神宮の宮司であったことから、日本野鳥の会東京支部の明治神宮探鳥会では有料の御苑にタダで入れてもらっていました。私も何度か恩恵にあずかっています。今、私がこうして鳥に関わる仕事ができるのも、元をたどれば飯島さんがいらしたおかげなのです。
その飯島さんが、10年前に否定されたのにも関わらず、また日本人でありながらコウグイスの存在を認めた根拠はなんでしょう。リストは、学名とローマ字の和名を列記しただけのもの、そのためそれぞれの種類についての解説がないので理由は不明です。
この『日本の鳥目録』は、飯島さん30才のときのお仕事です。30才の若さでは、テンミックに反証するすべを持たなかったのでしょうか。飯島さんが、まだ学業中場であったためでしょうか。
私が調べた限り、これ以降にコウグイスは、見つかりませんでした。コウグイスは、シーボルトの『日本動物誌』から飯島さんの『日本の鳥目録』まで、およそ40年間存在したことになります。
ウグイスの学名と和名の変遷をたどり調べてみたら、日本の鳥類学の夜明けを知ることができました。(おわり)
飯島 魁 1891 Nipon no Tori Mokuroku 動物学雑誌 Vol.3 31-33
下記サイトにて動物学雑誌のバックナンバーを閲覧できます。飯島さんの『日本の鳥目録』は、当該号の”OTHERS”という項目に入っています。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10824026?tocOpened=1
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