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2020年3月27日 (金)

『鳥はなぜ鳴く?ホーホケキョの科学』-増刷御礼・その2

 キットリッツがハシナガウグイスにつけた学名は、Sylvia diphone。その後、属名のSylviaは何度か変更され現在のCettiaに至ります。
 なんとウグイスの種小名は、小笠原の亜種ハシナガウグイスのものだったのです。なお、diphoneのdiは2です。mono、di、tri、tetraのdiです。phoneは、今では電話の意味として使われることがあります。しかし、当時はまだ電話は普及していませんので、元の意味の”音”でよろしいでしょう。ですから、2つの音という命名です(久保順三・1991)。
  ウグイスの「ホーホケキョ」はどう聞いても4音、2つ以上の音があります。そのため、この学名と合致しないのが気になっていました。
 思い出してください。方言のところ(122ページ)で書いたように小笠原のハシナガウグイスのさえずりは「ギーチョン」や「ギーホッ」と聞こえ、2音なのです。キットリッツが命名したのは、ハシナガウグイスなのですから、2つの音という意味で合致します。キットリッツは、実際に小笠原で生きたハシナガウグイスの鳴き声を聞いて、学名を付けていたのです。
 当時の多くの分類学者は、採集人が取ってきた標本を元に学名を付けました。そのため学名の意味は、色や形になりがちです。鳴き声由来の学名は、命名者が実際に見聞きした証拠となります。
  現在、ハシナガウグイスの亜種名まで表記すると、Cettia diphone diphoneです。
 本州などのウグイスの亜種名は、Cettia diphone cantansとなります。ハシナガウグイスのように、種小名と亜種名が同じ亜種を基亜種といいます。ウグイスの場合、ハシナガウグイスが基亜種となります。これは、亜種のなかで最初に学会に登録されたものが基亜種となるためです。
 多くの場合、分布が広く数の多い亜種のほうが先に学名がつけられることあるため、基亜種は普通にいる亜種となります。しかし、小笠原だけというたいへん分布の狭いところにいる亜種が基亜種になることもあるのです。
 私は、1988年にロシア(当時はソ連)のサンクトペテルブルク(当時はレニングラード)に行ったことがあります。大きな博物館があって、現地の鳥類学者とタイガに野宿に行ったりしてバードウォッチングも楽しんできました。そのとき、オガサワラマシコの標本を見せてもらいました。世界に11体しかなく日本にはない標本なのですから、とても緊張して見たのをおぼえています。このとき、この博物館にはキットリッツが採集したハシナガウグイスの標本もあったはずですが、そこまで気が回らず、今思えば残念なことをしました。(つづく)
参考文献
久保順三 1991 日本鳥名ノート・改訂版 鎌倉自主探鳥会

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