« 2020年10月 | トップページ | 2020年12月 »

2020年11月

2020年11月21日 (土)

ルリビタキの秋のさえずり-日光

 秋にさえずる鳥がいることは、よく知られています。
 今回の日光でもいくつか録音することができました。
 コガラについで、ルリビタキのさえずりです。
 YAMAHA W24で録音、ボリュームの増幅、2,500Hz以下のノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

 ルリビタキの秋のさえずりを録音できたのは、初めてです。
 初夏のさえずりにくらべると少し力強さに欠ける鳴き方ですが、しっかりとさえずっていました。
 ルリビタキは午前6時15分頃からさえずり始め、7時10分まで断続的に鳴いていました。この間、地鳴きも録音されていましたが、地鳴きとさえずりがかぶっている部分があり、さえずるルリビタキと地鳴きをするものがいたことになります。雄と雌が、いっしょに行動していたのかもしれません。

2020年11月20日 (金)

コガラのさえずりの課題

 昨日、コガラのさえずりをアップしたところ、Facebookに興味あるコメントをいただきました。以前より課題としていた問題であり、ここで整理して起きます。もし、すでに観察、あるいは録音されていた方がいましたらご意見をいただければ幸いです。
 まず、関東地方のコガラの典型的なさえずりです。栃木県日光にて繁殖期2015年4月25日に録音したものです。

 ゆっくりと「ツチー、ツチー」を繰り返しています。はじめの「ツ」は3,500Hz、次の「チー」は5,000Hzと、1,500Hzほど高い音で鳴いています。他の音源では、4,400Hzと5~5,500Hzの音で鳴いているものもあり、高い低いの違いがあります。
 多くは、この2音の繰り返しでさえずっています。ただ、テンポがもっとゆっくりとした鳴き方、あるいはヒガラに近いほど早口の鳴き方をする場合もあります。逆にヒガラがゆっくりと鳴く場合もありますので、注意が必要な鳥です。
 そして、今回録音したバリエーションに似たコガラのさえずりです。日光で2014年3月9日にカミさんが録音したものです。

 やや早口で「チーチーチー」と繰り返しています。3,300から3,400Hzの間に音があります。昨日アップした音源では、2,800~3,600Hzに音があり「ツチー」に比べて低い音で鳴いています。厳密には昨日アップしたさえずりとは、声紋パターンに違いがありますが、聞くとほとんど同じように聞こえます。また少なくとも「ツチー」鳴きとは異なります。
 Facebookでは、日本野鳥の会オホーツク支部の花田行博さんから「この(「チーチー」)鳴き声、北海道のコガラと同じさえずりですね」さらに「本州で鳴く別な音声(「ツチー」鳴き)は北海道で聞いたことがありません。」とのコメントをもらいました。
 また、和歌山県の中村進さんからは「和歌山のコガラもこの(「チーチー」)声で囀ります。(略)高音の澄んだゆっくりと囀る囀りは聞いたことがないのです。」とのことでした。
 要するに北海道と和歌山県のコガラは「チーチー」鳴きで「ツチー」はしないことがわかりました。逆に関東地方のコガラは「ツチー」が主で、「チーチー」鳴きをときどきするということになります。
 コガラがさえずるのは、夏鳥の渡ってくる前の早春です。また、早朝で鳴きやんでしまうことがあります。身体が小さなだけに声量も少なく、録音のしづらい鳥でもあります。いつも見て聞いているようで、意外と録音していないことに気が付きました。図鑑の記述もCDに収録されている音声も関東地方在住の筆者が多かったため「ツチー」鳴きが流布されてしまったようです。少なくとも、今回の記事から地方による違いがありそうです。そして、普通種のコガラでさえ、こんな基本的なことがわかっていなかったに気が付きました。
 野鳥録音が全国に広がることで、少しでも是正されて行くと良いですね。そして、これから新しい知見がいくつも見つかるかと思うと楽しみです。

2020年11月19日 (木)

コガラの変わったバリエーションのさえずり-日光

 日光の紅葉は、東照宮などのある市街地がピークを迎えていました。毎年のことながら紅葉シーズンの鳥は薄めで、のんびりとできます。でも、せっかく行ったのですからタイマー録音を仕掛けてみました。
 まずは、昨日の早朝に入っていたコガラのさえずりです。YAMAHA W24で録音、ボリュームのアップ、2,500Hz以下のノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

 現場で録音を確認したときは、鳥の名前が浮かばず謎の鳥がまた録れたと思いました。家に帰ってからいろいろ確認すると、拙ブログで取り上げていた鳴き声でした。
 以前「コガラがハシブトガラのようにさえずるか」と題してカミさんが録音してきた音源をアップしているものと同じでした。
 http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2014/03/post-4c06.html
 当時は、ハシブトガラとの違いに不安があり、今読むとよくわからない記事になっています。
 また、現在バードリサーチの「さえずり図鑑」に収録されているコガラのさえずりもバリエーションが増えていました。このなかの北海道富良野で録音されたさえずりと一致しました。
  https://db3.bird-research.jp/saezuri/birdsong/detail/112
  7番目のアイコンをクリックしてください。
 こうして不明な鳴き声を一つひとつ確認できる良い時代になったと実感いたしました。

2020年11月16日 (月)

実らないカラスウリ-六義園

 六義園の森は、実りの季節を迎えています。スダジイの実は、地面に敷き詰めたように落ちています。カジ、イヌビワ、イイギリなどの実も今年は豊作です。多くの小鳥が、この実りの恩恵を受けて命のつないで行くかと思うとほっとします。
 ところで、カラスウリの実は不作です。

 Karasuuri
 この写真の藪を覆うほとんどがカラスウリですが、実はわずか1個です。わかりにくいですが、真ん中にある赤い実がカラスウリの実です。夏には、レースのような花が地面にたくさん散っていましたので、花が咲かなかったわけではありません。花が咲いても実を付けなかったことになります。
 六義園でカラスウリを見ている私は、カラスウリは花の数に対して実を付けるのが少ない植物だと思っていました。ところが秋が瀬公園や芝川第一調節池などに行くと、カラスウリの赤い実が鈴なりになっていました。六義園のカラスウリが、なぜか実を付けていないことを知りました。
 カラスウリは個性的です。雄花と雌花と別れていること、そして夜に咲くことです。鳥で言えばフクロウやヨタカのように夜行性の花なのです。雄と雌が別れているワケですから、この間を取り持つ媒介者が必要です。それも夜に活動する蛾、スズメガの仲間が無くてはならない存在なのです。
 ようするに六義園には、スズメガが少ないのです。ふつう夏の森の中を歩いていれば、必ず出会う芋虫を順路で見ることも希です。夏の夜に窓ガラスに蛾が集まることもなくなりました。蛾は成虫、幼虫を問わず、いろいろな動物食の生き物が依存している生き物だと思います。
 今や六義園の森は、蛾という要素が欠けてしまった生態系となっていることになります。夜に咲くカラスウリの実の少なさから自然の変化に気が付きました。

2020年11月 7日 (土)

オオタカ2羽出現-六義園

 本日の六義園では、そこはかとない緊張感が漂っていました。
 カモ類が岸辺近くいて、ハシブトガラスがときどきモビングコールしています。
 小鳥のハクセキレイやヒヨドリなどはいつもどおり飛び交っていますので、オオタカがいる可能性が高い雰囲気です。
 と思っていたらドバトの10数羽の群れが上空をパニックになって旋回しています。旋回からはずれた1羽にオオタカがアタックして行きました。やはり、オオタカがいました。ドバトとオオタカが姿を消した森とは反対側から、またオオタカが飛んできました。なんと早い旋回でしょう。
 このオオタカとドバトのバトルに、ハシブトガラスが参戦してきました。最初は、1羽が果敢にも向かっていきました。追いながらも追われる展開で、勝負はわかりませんが、そこはハシブトガラスのこと10羽が救援に駆けつけオオタカに向かっていきます。
 よく見ると、このハシブトガラスのなかにオオタカがいました。オオタカは、なんと2羽でした。ですから、最初に早い旋回だとおもったのは、別のオオタカが別方向から飛んで来たためでした。
 六義園では、オオタカの出現が多くなりましたが、一度に2羽が見られたのは初めてです。
 オオタカ2羽が、いっしょに写っていることを優先して選んだ写真です。右端のオオタカは小さく見えますが、ピントが合っていないように距離が離れているためです。
Goshawk2011071

2020年11月 5日 (木)

青空のもとバードウォッチング-舎人公園

 考えてみたら舎人公園は、冬の北風の寒い時と夏の溶けるような暑さのときにしか行っていませんでした。今日のような、すがすがしい天気の時に訪れたことはなかったことに気が付きました。それにしても、家で仕事をしていられていない良い天気、広い青空を見ているだけでも心が洗われる感じです。

 Toneripark2011051
 その上、舎人公園は家からもっとも密を避けていける公園であることもわかりました。
 長い間、工事中だったサンクチュアリは、東京オリピックまで完成と聞いていましたので、どうなったのかまず見に行きました。
 「しぜんかんさつひろば」のゲートが建設され全体が柵で囲まれていました。加えて、3ヶ所の観察窓の開いた塀というか壁と鳥図鑑の案内板が設置されていました。このあたりは微妙なところで、施設がないとどこでも見ることができたのに施設ができたため観察はしづらくなってしまいました。野鳥にとっては、たえず人影がチラチラしたり長いレンズを向けられたりすることが緩和されることで安心して過ごすことができる空間ができたことになります。

Toneripark2011052

 あと、この周辺ではまだ工事は進行中で、ユンボや工事車両が稼働中。しばらくはにぎやかそうです。
 このあと、中央の池を一回りしました。まだ、カモの姿が少なくユリカモメはまだいません。オオバンとバンがいっしょに見られるのは、舎人公園ならです。バンと並ぶとオオバンがそれほど大きくないことに気が付きます。
 カミさんが遠くで、アリスイらしい声が聞こえるとのこと。ちょっと遠かったです。
 舎人公園名物の滅茶苦茶なハイブリッドガモたちが出迎えてくれます。カルガモとマガモのハイブリッドに加えて、アイガモとカルガモ、アヒルとカルガモ、これらが2代、3代と代を重ねているのですから、わけがわかりません。マガモとアヒルでは、鳴き方が微妙に違うことを経験していますが、ハイブリッドではどうなるのか課題です。
 舎人公園のハイブリッドカモたちは、見る限りマガモ系とカルガモ系なので、マガモとカルガモのDNAに違いがなく交雑が起きやすいという説になっとくできます。しかし、観察会で種の概念のない方に説明するのに苦労するハイブリットたちです。
 近くで鳴いてくれたのは、純粋なヒドリガモです。
 D100で録音。800Hz以下のノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。


 最初のほうは、3羽の雄が胸を合わせてケンカをしているときの声です。後半は、1羽が声を張り上げていました。ときどき聞こえる濁った声は、雌の鳴き声です。 
 ヒドリガモたちの鳴き声が澄んだ秋空に響く舎人公園の雰囲気が伝われば幸いです。

 

2020年11月 4日 (水)

『朝の小鳥』スタジオ収録-12月は今年、録音した傑作選

 本日は『朝の小鳥』のスタジオ収録でした。リモートでの監修も板についてきました。
 今年は、新型コロナの蔓延のなか思うような取材ができませんでした。それでも、近くの六義園でトラツグミやメジロが録音でき、こっそと行った日光では早朝のコーラスを録音できました。コーラスの中からヒガラとセンダイムシクイがとてもよく鳴いていましたので、取り出して番組に使いました。こうして録音した今年の傑作選、4点選んでの構成です。
 なかでもメジロの録音は、TASCAM DR-05の性能を確かめるために4月7日より6月25日の間、42回一晩録音した音源からです。毎晩だいたい7時間半録音しています。この間、録音機の電池の持ちや設置場所による音の変化などをチェックしています。
 メジロは4月7日には午前3時47分に鳴き始め、27分間にわたってさえずり続けていました。他の小鳥と同じように、メジロも夜明け前30分前に鳴き始め、およそ30分間鳴き続けることがわかりました。
 そして、1ヶ月後の5月になりますと、さえずりはじめは36分遅くなり、鳴き続ける時間も20分間と短くなりました。そして、さらに1ヶ月後の6月3日が、さえずりの最後となりました。最後の日は、わずか6分間鳴いて終わりとなりました。これ以降、さえずりは聞かれなくなりました。メジロは、4月7日以前もさえずっていたと思われますので、少なくとも2ヶ月以上、さえずり続けていたことになります。
 今まで、毎晩毎朝の録音をしたことがありませんでしたが、こうして録音すると身近な鳥のメジロのさえずりに関する習性のいったんがわかりました。これもある意味、コロナ禍のおかげといえばおかげです。
 そんなことで録音した野鳥たちの鳴き声を楽しんでいただければ幸いです。

2020年12月 放送予定
  12月 6日 トラツグミ
     13日 ヒガラ
      20日  センダイムシクイ
     27日  メジロ

2020年11月 3日 (火)

トラフズクが飛んだ-六義園

 今シーズンの六義園では、初記録のタヒバリが見つかったり記録の少ない鳥が見られてコロナ禍のなかにも関わらずバードウォッチングを楽しんでいます。
 今日の六義園では、ドバトが落ち着きがなく上空を飛び回ったり、カモたちが岸辺に寄っていたりして、なんとなき緊張感が漂っていました。しかし、ハシブトガラスのモビングコールはなくオオタカがいるときの緊張感に比べて緩さも感じました。
 オオタカ出現を期待して空が開けている池のほとりにいると、森の中からハシブトガラス数羽に追われて1羽の大きな鳥が飛び出しました。丸い翼の先と尖っていない頭、フクロウの仲間であることがわかりました。森の中から出てきたので、フクロウかとも思いましたが、翼の下に黒い大きめの斑があり、コミミズクと判定しました。常連さんたちに連絡して、ほとんどの方が写真を撮ることができて皆さん満足のごようす。
Shorteared-owl201103
 ところが、家に帰ってきて自分の撮った写真を見て確認をすると、なんとトラフズクのようです。
 せっかく飛んでいるハシブトガラスといっしょに撮れたので、翼開長の数値を比較して見ます。下記の通り。ハシブトガラスと比べてより小さいのはトラフズクですが、距離や個体差の違いで差がでそうな数値です。
フクロウ  94~102cm
コミミズク 94~104cm
トラフズク 91~102cm
ハシブトガラス 100cm
 だいたいトラフズクはとまっての出会いが多く、そういう時は光彩の色で識別しています。しかし、飛んでいるシーンでは不可能です。なんとか画像を加工して翼の裏側パターンの違いをチェックしてみます。まずフクロウは全体に一様なので排除できます。大きな黒い斑点のあるのはコミミズクとトラフズクということになり、翼の先の黒いパターンの違いでコミミズクとトラフズクの区別ができるようです。コミミズクが黒く、トラフズクはまだら、あるいは黒い部分が小さいでの区別することになります。アップした写真を見る限りトラフズクのパターンに近く、トラフズクではないかと思います。
 今思えば、最初に森の中から飛び出してきたことからトラフズクらしい行動でした。
 いずれにしても六義園でのトラフズクの記録は、お初となります。
 

« 2020年10月 | トップページ | 2020年12月 »