« コガラの変わったバリエーションのさえずり-日光 | トップページ | ルリビタキの秋のさえずり-日光 »

2020年11月20日 (金)

コガラのさえずりの課題

 昨日、コガラのさえずりをアップしたところ、Facebookに興味あるコメントをいただきました。以前より課題としていた問題であり、ここで整理して起きます。もし、すでに観察、あるいは録音されていた方がいましたらご意見をいただければ幸いです。
 まず、関東地方のコガラの典型的なさえずりです。栃木県日光にて繁殖期2015年4月25日に録音したものです。

 ゆっくりと「ツチー、ツチー」を繰り返しています。はじめの「ツ」は3,500Hz、次の「チー」は5,000Hzと、1,500Hzほど高い音で鳴いています。他の音源では、4,400Hzと5~5,500Hzの音で鳴いているものもあり、高い低いの違いがあります。
 多くは、この2音の繰り返しでさえずっています。ただ、テンポがもっとゆっくりとした鳴き方、あるいはヒガラに近いほど早口の鳴き方をする場合もあります。逆にヒガラがゆっくりと鳴く場合もありますので、注意が必要な鳥です。
 そして、今回録音したバリエーションに似たコガラのさえずりです。日光で2014年3月9日にカミさんが録音したものです。

 やや早口で「チーチーチー」と繰り返しています。3,300から3,400Hzの間に音があります。昨日アップした音源では、2,800~3,600Hzに音があり「ツチー」に比べて低い音で鳴いています。厳密には昨日アップしたさえずりとは、声紋パターンに違いがありますが、聞くとほとんど同じように聞こえます。また少なくとも「ツチー」鳴きとは異なります。
 Facebookでは、日本野鳥の会オホーツク支部の花田行博さんから「この(「チーチー」)鳴き声、北海道のコガラと同じさえずりですね」さらに「本州で鳴く別な音声(「ツチー」鳴き)は北海道で聞いたことがありません。」とのコメントをもらいました。
 また、和歌山県の中村進さんからは「和歌山のコガラもこの(「チーチー」)声で囀ります。(略)高音の澄んだゆっくりと囀る囀りは聞いたことがないのです。」とのことでした。
 要するに北海道と和歌山県のコガラは「チーチー」鳴きで「ツチー」はしないことがわかりました。逆に関東地方のコガラは「ツチー」が主で、「チーチー」鳴きをときどきするということになります。
 コガラがさえずるのは、夏鳥の渡ってくる前の早春です。また、早朝で鳴きやんでしまうことがあります。身体が小さなだけに声量も少なく、録音のしづらい鳥でもあります。いつも見て聞いているようで、意外と録音していないことに気が付きました。図鑑の記述もCDに収録されている音声も関東地方在住の筆者が多かったため「ツチー」鳴きが流布されてしまったようです。少なくとも、今回の記事から地方による違いがありそうです。そして、普通種のコガラでさえ、こんな基本的なことがわかっていなかったに気が付きました。
 野鳥録音が全国に広がることで、少しでも是正されて行くと良いですね。そして、これから新しい知見がいくつも見つかるかと思うと楽しみです。

« コガラの変わったバリエーションのさえずり-日光 | トップページ | ルリビタキの秋のさえずり-日光 »

研究」カテゴリの記事

コメント

>まつ様
興味深いですね。
私もコガラの声に注目してみたいと思います。

戦前戦後だったら「鳴き方が違う!=別亜種だ!名前を付けよう!」となってマツダコガラとか、コガラとオオガラとか?、名前がついていたかもしれませんね(笑)。

また調べる楽しみが増えました。

S木♂様 
 その後、海外のwebサイトのWillow Titを聞いたりしてみました。
 ヨーロッパのものも「チーチー」と鳴いていて「ツチーツチー」はありませんでした。ひょっとすると、関東地方のコガラが世界的に特異なさえずりをしているのかもしれません。
 あるいは、本来は「チーチー」で「ツチーツチー」というバリエーションを加えることで、雌にもてようとする先駆的な雄が多いのかも。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« コガラの変わったバリエーションのさえずり-日光 | トップページ | ルリビタキの秋のさえずり-日光 »