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2020年12月

2020年12月29日 (火)

スズメのいっせい鳴き止み

   野鳥録音を始める前、荒川の川原で1,000羽以上はいると思われるスズメの大群に出会ったことがあります。大群ですから、とてもにぎやかに鳴き合っていました。ところが、近づいて写真を撮ろうとすると、いっせいに鳴きやみました。1羽くらい「チュン」と鳴きそうですがありません。1,000羽の群れが少なくとも数10mにわたって広がっているのですから、1羽の警戒の声が隅から隅まで聞こえるはずもありません。また、行動動作であれば見えないスズメに伝わらずフェードアウトするように鳴きやむはずです。いったいどのような合図を送っているのか不思議でした。
 このスズメの一斉鳴き止みについては、何度か質問を受けたこともあり、身近な鳥をよく観察している人やスズメをよく知っている人は知っている謎です。
 先日、カミさんが実家に行ったときに庭に来るスズメの群れを録音してくれました。実家には、大きなソメイヨシノの木があってスズメが多いときで50羽はやって来ます。水盤のそばに録音機を置いて2時間3分の放置録音です。この日は、30羽程度の群れだったそうですが、2時間の間にいっせい鳴き止みが、5回ありました。そのうちの1例です。
 YAMAHA W24で録音、1,500Hz以下の低音の軽減、ボリュームの調整、ノイズリダクションをかけています。

 聞くかぎり特別な鳴き声が聞こえることも声紋で表示されることもありませんでした。他の4回についても同じで、今まで鳴き合っていたものが突然、鳴きやんでいます。
 もちろん、スズメと私たちヒトが感じる時間の感覚に違いがあるはずですから、私たちとは違うように聞き、感じている可能性大です。ただ、声紋表示では見つけることができないだけかもしれません。将来、音の解析方法が開発されれば解明できるかもしれません。
 野鳥たちから与えられる不思議の課題、今年もいくつか巡り会いあいました。また、来年もこうした発見に出会えることが楽しみです。

2020年12月26日 (土)

『日本の離島の野鳥1 飛島』-ご紹介

 日本野鳥の会山形支部の簗川堅治さんが、飛島図鑑を出すとの噂が夏頃から伝わって来ました。なんでも、飛島で記録された野鳥の図鑑で、珍鳥がごろごろ出現する飛島ですから、どんな図鑑になるのか、期待をしておりました。

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 一昨日『日本の離島の野鳥 飛島』到着いたしました。
 思った以上に厚い本、ボリュームがありますね。また、掲載されている写真はすべて飛島で撮影されたもので、飛島へのこだわりを感じます。
 目を引くのは、まだ日本産鳥類目録に載っていない種類、たとえばルビーキクイタダキ、ノドジロムシクイ、ムナグロノゴマ、ルリビタイジョウビタキ、フッケンアオヒタキなど。この他、検討中の種も多数載っているので、検討材料になることと思います。
 私にとってうれしいのは、専用サイトに音声がアップされていることです。146種の鳴き声を聞くことができます。鳴き声でないと識別が難しいムシクイも多数収録されていますから、不明な音源解明のヒントが得られるかもしれません。これらの音源もすべて飛島で録音されたものなのですから、飛島へのさらなる強いこだわりを感じます。
 さらに、ところどころにある筆者のくすぐるようなギャグを見つけるのも楽しいです。
 私にとって飛島は、蒲谷鶴彦先生と録音機を並べて録音した数少ない思い出の場所です。
 早くコロナの蔓延が収まって、飛島の鳥たちに会いに行きたくなる図鑑でした。
 現状では、ホビーズワールドでの入手がお勧めです。
 https://www.hobbysworld.com/item/25014509/

2020年12月25日 (金)

ジョウビタキ雌の鳴き声-六義園

  都立公園の年末年始の休園期間が長~くなりました。六義園も例年12月29日~翌年1月1日まで4日間ですが、今年は12月26日から1月11日までとなりました。
 ということで、本日は六義園納めとなりました。
 日本海側から関東北部の山に雪が降ったおかげで、ツグミ、シロハラ、アオジといった地面で食べ物を探す小鳥が増えました。アトリも見つけました。本日は、一瞬ですがこの小鳥たちを追ってハイタカも出現しました。
 録音できたのは、ジョウビタキの雌の鳴き声です。このジョウビタキは、日本に雪の降る前から六義園にやって来ていました。日本海を渡ってもっと北からやってきたのですから、大陸の繁殖地に雪が降ったのをタイミングで来たのかもしれません。
 TASCAM DR-05で録音、1,500Hz以下の音域のノイズを軽減、ボリュームのアップ、ノイズリダクションをかけています。

 ジョウビタキの雌と雄との鳴き声の違いを見いだしたいと思っていますが、いまのところわかりません。雌はこのように良く鳴き録音もしていますが、雄は鳴くことが少ないのかサンプルが少なく比較がなかなかできないでいます。
 六義園の野鳥録音納めは、ジョウビタキ雌の鳴き声の録音となりました。

2020年12月24日 (木)

オカヨシガモの鳴き声-六義園

 このところ六義園の池は、カモであふれています。面白いのは、六義園では珍しいカモが日替わりで入ってくることです。多いカモは、キンクロハジロ、ホシハジロ、カルガモ、マガモです。しかし、オカヨシガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、コガモなどが単独で1日だけ滞在してくれます。どうも、キンクロハジロが夜に行く餌場から付いてきてしまったようです。
 ちなみに、キンクロハジロにとって六義園の池は昼のねぐらです。ですから日没とともに飛び立ち、夜は0羽となります。どこに行くかはわかりませんが、荒川か東京湾まで行っているのかもしれません。これらのカモは、キンクロハジロが戻ってくるときにつられて六義園に来た感じです。
 今日は、オカヨシガモの雄が1羽がつられて来ていました。
 オカヨシガモの鳴き声を録ろうと苦労したことを思い出しました。箕輪義隆さんから習志野市茜浜の地先にいると情報をいただき行ったことがあります。ゴミ処理場から温かい水が排水されていて、カモの群れが集まっているとのことでした。しかし、排水の音がかなり大きいことと、そもそもオカヨシガモがいるものの鳴いてくれませんでした。
 ついで、六義園の常連さんから小石川後楽園の池になぜかオカヨシガモが多いという話を聞き行きました。情報どおりオカヨシガモが10数羽いました。カモ類は、昼間は寝ていても夕方になると活動を開始し鳴くことがあるので閉園時間ぎりぎりまで粘ったのですが、一声も鳴いてくれませんでした。ということで、私にとってオカヨシガモは鳴かないカモでした。
 やっと鳴き声が録れたのは葛西臨海公園の鳥類園でした。それもディスプレイの声でした。では、鳴き合う声はどんな声なのか、不明でした。
 本日、たった1羽のオカヨシガモが鳴いてくれました。3声鳴いてくれたうちの1声をゲットできました。
 TASCAM DR-05で録音。1,500Hz以下の低音の軽減、ボリュームのアップ、ノイズリダクションをかけています。

 ヒヨドリの鳴き声の合間に聞こえるカタカナで書けば「ガア」という声です。ガア系ではありますが、マガモやカルガモの「ガアガア」と違った趣のある声です。同じように濁った音ですが、なんとも深みのある濁りに聞こえます。たとえれば、ハシボソガラスとミヤマガラスの濁った声の違いと言ったらよろしいでしょうか。
 オカヨシガモは、シックな装いと同じように鳴き声もシックでした。 

 

2020年12月23日 (水)

日本野鳥の会神奈川支部の「BINOS 第27集」

 日本野鳥の会神奈川支部から研究論文集「BINOS 第27集」をいただきました。毎年お送りいただくばかりで、申しわけございません。
 今年も内容は豊作で、論文2編、観察記録7編、調査記録4編、保護記録2編が収録されています。この他、神奈川支部の行事や活動報告もあります。A4版136ページになりました。

Binos2020
 いちばんショックというか、びっくりしたのが、八木茂さんの丹沢におけるリュウキュウサンショウクイの繁殖記録です。それも、単に繁殖期に見たというのではなく、巣立ちまで観察しての報告です。リュウキュウサンショウクイは、せいぜい九州南部までがついこの間までの繁殖分布の北限で、私は奄美大島で録音することができました。本州での繁殖期の観察記録はあるもののここまで確認された繁殖記録は始めてです。
 私は、過去に録音したサンショウクイの音源の確認をしなくてはなりませんし、これからサンショウクイが鳴いていたら、リュウキュウサンショウクイかどうかの確認も必要になりました。また、いつ日光にやってくるのか、ある意味楽しみです。
 録音関連では、神戸宇孝さんと麻生千晶さんのデジカメで撮影した音声から、オオセッカの存在を確認できたという報告です。実際の音声を聞かせてもらいましたが、間違いなくオオセッカでした。昔は、録音するためには録音機が必要でしたが、今やスマホからデジカメまで録音機能があるので、まずはそれで録音してみようと野鳥録音の入門では言ってます。それを実践してくれた上に、オオセッカをゲットできたのですから、今後の好例として引用されていただきます。
 などなど、あとはお買いもとめいただき、じっくりと勉強していただければと思います。
 下記サイトで、より詳しい内容がアップされています。さらに、入手方法もアップされていますので、ぜひお買い求めいただければと思います。
 https://kanagawashibu002.blogspot.com/2020/12/binosvol272020.html

2020年12月13日 (日)

くちばし全体がオレンジ色のマガモ雌-六義園

  六義園の紅葉がピークを迎えています。予約による入場制限も今日までとなりました。
 今年の冬は、ライトアップがないため小鳥の姿は多いように感じます。
 池のカモたちも、のんびりとしていました。
 千鳥橋の周辺にマガモが数羽が集まっていました。よく見ると、くちばしの色に違和感のある雌が1羽いました。くちばし全体が、ほぼオレンジ色をしていました。
 雄の今年生まれの幼鳥のなかには身体の色が雌で、くちばしが黄色いタイプが見られます。しかし、この雌は雄の黄色のくちばしとは違って、赤みのあるオレンジ色をしています。本来の雌のくちばしの縁の色が、全体にひろがっている感じです。
 写真奥の雌は、本来のくちばしの模様のパターンをしてます。
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 5年ほど前にも六義園で見つけていて記事にしていました。
  http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2016/01/post-81f2.html
 前回のマガモの雌と比べてみると、くちばしのパターンはよく似ていますが、2016年のものは身体の色が黒く見え、今回のもの比較して白っぽく見えます。5年たっていることと、身体の色から別のマガモだと思われます。
 マガモは、人に飼われて身体の模様に変化のあるアヒルやアイガモと交雑を繰り返していることでしょう。その影響の可能性があるのかもしれません。
 いずれにしても、個体識別ができるので六義園のマガモの動向を知るのに便利になると思います。

2020年12月 8日 (火)

ホンセイインコのつぶやき-駒込

 六義園が紅葉の見頃となり、予約制にかかわらず、混むようになりました。
 そのため、他のバードウォッチングポイントに出かけてみました。GOTO散歩をかねての探索です。
 日向でのんびり鳥の出てくるのを待っていると、頭の上のイチョウの木にホンセイインコが2羽やって来ました。耳を澄ますと、なにか言っているようです。
 PCM-D100で録音。ボリュームのアップ、300Hz以下の音域のカット、全体にヒスノイズリダクションをかけています。

 街中の緑地ですから、都会の騒音がにぎやかな中での録音です。ホンセイインコとの距離は約5m、つぶやくような小さな声ですからノイズに紛れています。また、遠くで鳴くヒヨドリが声のほうが大きいため、それを軽減しました。
 今まで大きな声で「キュルッ、キュルッ」のバリエーションで鳴くものだと思っていましたが、このような声も出すことがわかりました。
 

 

 

2020年12月 4日 (金)

野鳥の鳴き声で目が覚める時計-ご紹介

 時計会社のリズムさんが、野鳥の鳴き声のする壁掛け時計を作って、まずまずの評判だったということで、今度は目覚まし時計を作ってくれました。12月1日より発売開始ということで、私の手許にもやって来ました。

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 時計に付いているスピーカーで野鳥の鳴き声を再現する難しさはありましたが、とてもおしゃれなデザインでどこに置いても邪魔にならない大きさです。
 考えてみると、私の友人知人たちの多くは目覚まし時計のいらない生活をしている人が多くなりました。それに、若い人はスマホが目覚まし代わりですよね。果たして目覚まし時計が売れるのか心配しておりましたが、日本野鳥の会の販売担当からはカタログ配布とともに予約が入っているとのこと、一安心しています。
 鳥の声の目覚まし時計では、癒やされて寝てしまうのではないかという心配される向きもありました。そのような方には、音を大きく設定しておくことをお勧めします。

価格:4,950円(税込)
仕様・サイズ・重さ:99×135×68mm/200g
  ・固定/ランダム/電子音から選択
  ・音量(大・小)切替式
  ・16種の鳥の声アラーム音+シークレット1種
収録されている種:
ウグイス、シジュウカラ、アオジ、オオヨシキリ、コジュリン、アカショウビン、カッコウ、キビタキ、サンコウチョウ、コマドリ、クロジ、クロツグミ、ホトトギス、イカル、ホオジロ、カワラヒワ+シークレット1種

ニュース記事
 日本経済新聞のプレスリリース
 https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP600678_V21C20A1000000/
 「日本野鳥の会」が収録した鳥たちの声で起きるってステキ!
 https://news.line.me/articles/oa-andgp/0c7bce7ce1c8
メーカー制作のYoutube
   https://www.youtube.com/watch?v=Jg1Ed4B18fw
お買い求めは日本野鳥の会のオンラインショップで
 https://www.birdshop.jp/fs/wildbird/goods4/gd4455

2020年12月 2日 (水)

『朝の小鳥』スタジオ収録-来年1月は明治神宮の鳥

 本日は『朝の小鳥』のスタジオ収録でした。リモートでの監修です。
 もう来年1月放送分の番組作りかと思うと、今年1年の過ぎ去るのが早かったこと。コロナ禍のおかげで、1年損した感じです。
 1月の放送内容は、初詣でお馴染みの明治神宮の鳥たちです。
 明治神宮のような都会の緑地で、野鳥録音ができるかと思われる方がいるかもしれません。以前のようにパラポラやガンマイクを使っての録音では、都会の公園での録音は難しいものがありました。というのは、パラポラは音を集めて増幅、ガンマイクも音を増幅する効果がありますが、いっしょにバックにあるノイズも大きくなってしまうからです。
 私のフィールドの六義園でICレコーダーを使って録音しているかぎり、鳥が近くで鳴いてくれれば、編集でかなりクリアにすることができます。六義園の周りには、本郷通り、白山通り、そして山手線が近くを通っています。さらに300m四方しかないのですが、六義園では録音が可能です。
 その六義園に比べれば、明治神宮はもっと広いため、森の中心ではかなり都会のノイズが軽減されています。とくに、御苑のなかは静けさを感じます。
 都内のいろいろな公園で録音していると、録音可能な公園とノイズを避けられない公園があることがわかります。同じように道路が近くにあっても、その道路が高架だと降り注ぐようにノイズが流れてきて録音が難しくなります。たとえば、首都高が近くを通る浜離宮恩賜公園はダメでした。赤塚城公園も同じように近くを高速道路が通っていて、録音を諦めました。東京港野鳥公園は道路に加えて上から航空機の騒音が降り注いで来るので、録音は諦めてウォッチングモードで野鳥を楽しむことにしています。
 録音をしていると、公園によって騒音に違いがあることがわかります。

2021年1月 放送予定
  1月 3日 オシドリ
     10日 ヤマガラ
      17日 オオタカ
     24日 ウソ
    31日 コゲラ

2020年12月 1日 (火)

地鳴きのコーラス-日光

 コーラスといえば繁殖期のさえずりです。しかし、この季節はさえずる鳥は少なく、多くが地鳴きです。地鳴きでも、何種類かが鳴き合えば立派なコーラスになります。
 YAMAHA W24でタイマー録音、ボリュームのアップ、2,000Hz以下の低音ノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。 

 アップした42秒の間に、少なくともゴジュウカラ、ハシブトガラス、ルリビタキ、コガラ、コゲラが鳴いています。割愛したところでは、これに加えてシジュウカラ、ミソサザイ、エナガ、ヤマガラと思われる地鳴きが入っていました。これらの鳥が6分以上にわたって鳴き合ってしました。地鳴きのコーラスと言っても過言ではありません。
 実は地鳴きの録音は、とても難易度が高いのです。というのは、まずさえずりに比べて声量が低いことが上げられます。ささやくのように鳴く音なのですから、小さな音でしか録音できないのです。また、鳴いている時間が短い、あるいは数声で終わってしまうことも録音が難しい理由です。地鳴きをしているからと言って、録音機を準備しても録音ボタンを押す前に鳴きやんでしまうことが多いのです。
 今まで、CDなどに収録されている地鳴きには、警戒声が多いのもうなずけます。繁殖期に巣の近くで警戒している、あるいはなわばりに入ったために警戒する地鳴きです。警戒声は比較して声が大きく、長く鳴くことがあるため録音できるのです。
 今回、アップした地鳴きのコーラスは、存在確認のための鳴き合っている場面だと思います。人のいないタイマー録音の録音機の前では、鳥たちはリラックスしてお互いの存在を確かめ合いながら森の中を移動して行くようすの音だと思います。
 タイマー録音のおかげで、地鳴きのコレクションが増えました。

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