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2021年1月

2021年1月26日 (火)

キジバトのさえずり-染井墓地

 キジバトが、さえずっていました。
 TASCAM DR-05で録音、500Hz以下のノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

 キジバトのさえずりは、ほぼ一年中記録があるため、初鳴きと言って良いのかわかりませんが、とりあえず今年初めてさえずっていました。
 キジバトのさえずりについて、ブログの開設初期にネタにしています。改定しつつ再録します。
 キジバトと言えば生前、蒲谷鶴彦先生が「キジバトのさえずりを番組(「朝の小鳥」)で取り上げるのは、いつも躊躇する」とおっしゃっていたことを思い出しました。キジバトの声は、低いので低音のノイズに埋もれてしまうからだと思ったのですが違います。
 キジバトのさえずりをカタカナで表記すると「デ、デ、ポーポー」です。これを何度が繰り返して鳴き続けます。しかし、どんなに長く鳴いても最後は「デ、デ、ポーポー」ではなく「デ、デ、ポ」で終わるのです。私が録音した何点かの音源をチェックしてみましたが、最後を「ポーポー」と2声でかつ伸ばして終わるものはありませんでした。
 なぜ、これが困るのか。実は音の編集をしているとわかるのですが、何度も「ポーポー」と鳴いているのに突然「ポ」で終わってしまうと、なんだか編集をミスして音をぶった切ってしまったような感じになってしまうのです。といって、「ポーポー」で終わらせたらウソになってしまいます。だから、番組で取り上げるに躊躇するということになります。
 蒲谷先生に教えてもらうまで、私はキジバトがそんな鳴き方をしているなんて知りませんでした。また、この話をベテランのバードウォッチャーに話すと皆「へえ」という顔をします。「デ、デ、ポーポー」と鳴けばキジバトと名前がわかり、それ以上、声を聞くことはないからでしょう。
 野鳥録音をしていると、気がつく鳥の鳴き声の奥深さです。

2021年1月24日 (日)

水原秋桜子のお墓-染井墓地

  以前、三重県の神島にサシバの渡りを見に行ったとき、吟行のグループに出会いました。松尾芭蕉の「鷹ひとつ 見つけてうれし 伊良湖岬」をちなんで「タカ渡る」を詠みに来ていたのです。この頃は、バードウォッチャーより俳句を詠む人のほうが多かった時代です。私たちが鳥に詳しいと知って「あの飛んでいるのがタカですか?」と聞かれました。「いえ、あれはトビですので渡りません」しばらくしてサシバが飛んできたので「あれがタカです」と教えてあげたら、皆さんほっとされていたのを覚えています。
 もし、私たちがいなかったらトビでタカ渡るという俳句を詠んでしまったことになります。だからといって大勢に影響はないとは思いますが、ここはこだわって欲しいところです。
 染井墓地には有名人のお墓があります。そのひとつに、水原秋桜子のお墓もあります。
 ちょうど、入口から入って中央の道を行くと、すぐ左にある大きなお墓です。水原家とあり、左側に「水原秋桜子」と墓碑に書かれた単独の墓石が立っています。
Mizuhara1 Mizuhara2
  水原秋桜子と中西悟堂とは、縁のあることを知りました。
 楽古堂店主、木村成生さんのブログに出会いから当時の関係が書かれています。詳しく調べられ、読みごたえがあります。
  https://blog.goo.ne.jp/takanosu1736/e/1da8126a676da90fcc82b371b207e966
 ちょうど、日本野鳥の会の創立の頃、昭和の初期に2人は出会っています。また、この2人の出会いには山谷春潮も関係して、科学的に正しい野鳥の俳句を詠むネットワークができたことになります。
 山谷春潮は、鳥の本も出していた日新書院の社長、俳句を秋桜子、悟堂に野鳥を教わり、のちに科学的に鳥の季語を整理した『野鳥歳時記』(1955・中央公論社、この他、富山房、角川書店版がある)を出版しています。ちなみに脚本家の倉本聰の父親です。
 秋桜子は、神島であった吟行の人たちと同じように、鳥をしっかりと見て間違いのないように俳句を詠みたいと思った一人、その後の現代俳句に大きな影響を与えたことになります。
 秋桜子さんのお墓に手を合わせ、日本野鳥の会の存在理由のひとつがこうした科学的に正しい芸術の普及というところにあったことを改めて思い出しました。

2021年1月23日 (土)

頭の白いムクドリ-染井墓地

 染井墓地が鳥が多い印象があるのは、鳥が群れでいるからです。ツグミ、カワラヒワ、オナガ、ヒヨドリ、ホンセイインコ、そしてムクドリの群れが飛び交っています。
 そのムクドリの群れのなかに、頭の白いムクドリを見つけました。
Whitecheeked-starling210122
 以前、六義園でもこのタイプのムクドリを記録しています。当時の記事です。
   http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2012/02/post-0153.html
 もう、9年前になるので同じムクドリとは思えませんが、駒込を生息地とする群れのなかに頭が白くなる家系があるのでしょうか。
 以前の六義園のムクドリは警戒心が強いものでしたが、今回のムクドリは比較的のんびりしていました。他のムクドリが私を警戒して飛び立ったあとも1羽だけ残って、ゆっくりと写真を撮らせてくれました。

追記:部分白化ではないのではという意見をいただいたので、訂正いたしました。

2021年1月15日 (金)

『朝の小鳥』スタジオ収録-2月は万葉集の鳥

 昨日は『朝の小鳥』のスタジオ収録でした。リモートでの監修です。
 スタジオが水曜日から木曜日になりました。かつて蒲谷先生の収録日は木曜日でしたので、昔のようです。
 2月のテーマは、今までとは少し趣を変えて万葉集に登場する鳥です。万葉集には、およそ4,500件を超える和歌などが収録され、そのうち鳥が登場するのは589件あるといわれています。中西悟堂さんが調べたところでは、いちばん多いのはホトトギスで156件、2位がマガンで63件、3位ウグイスが51件、4位ツル46件だそうです。この4種類について、鳴き声を聞きながら代表的な和歌を紹介して解説いたしました。
 実はかなり簡単に考えていたのですが、和歌に合った音源を探すのがとてもたいへんでした。「鶴鳴き渡る」のイメージならば餌場で群れているにぎやかな音では雰囲気が違います。飛びながら鳴くようすでなければなりません。などなど、おかげで音源の整理ができました。
 おかげで鳥の登場する和歌をいつか精査することができました。気が付いたのは、和歌の作者は鳥の鳴き声を聞いて歌を詠んでいるものが多いことです。
 たとえば「鶴鳴き渡る」も餌場の干潟とネグラの内陸の湿地へ移動していく鳴き合うツルです。夜明け、あるいは夕暮れ時です。寝床、または家のなかで手作業をしながら聞いている感じがします。マガンの渡りは「雲隠り鳴く」ですから、雲の上から聞こえて来る鳴き合うマガンの声となり、高い空を飛ぶ渡りの群れであることがわかります。
 ホトトギスが多いのも鳴き声がはっきりして寝床でもわかることが、大きな要因でしょう。
 万葉集の鳥たちは鳴き声で、歌人たちを魅了していたことになります。


2021年2月 放送予定
  1月 7日 ホトトギス
     14日 マガン
      21日 ウグイス
     28日 ナベツル

2021年1月10日 (日)

『朝の小鳥』をポッドキャストで聞く・追記あり

 50年以上つきあっている録音仲間のF野さんは高校生の頃、文化放送の『朝の小鳥』ために目覚ましをかけ早起きをして番組を録音していました。今のようにいろいろな録音端子が付いているわけではありませんので、ラジオのスピーカーの近くにマイクを置いて息を殺して録音していました。もちろん、当時の録音機はオープンリールです。まだ、鳥の声のレコードが数点しかなかった時代、『朝の小鳥』は貴重な情報を与えてくれました。
 現在でも、日曜日の午前5時に起きて10分から始まる番組がはじまるのを待つというのが正当な聞き方でしょう。
 しかし、世はインターネット時代、radikoで聞くことができます。radikoをインストールしておけば、スマホでもPCでも放送から24時間はすべてのラジオ番組を聞くことができます。『朝の小鳥』は、タイムフリーで1週間の聞くことができます。ただし、無料なのは放送エリア(電波が届くエリア)です。文化放送のほかに、東北放送、茨城放送、新潟放送、朝日放送、琉球放送で放送されていますので、これらの可聴エリアの方々は無料で聞くことができます。
 そして、今回はポッドキャストで聞けるようになりました。
 iPhone、iPadなど、アップル系の通信機器ならば、ポッドキャストが最初からインストールされていますので、紫色のアイコンをクリックしてもらえばポッドキャストに行けます。あとは、検索で番組名を入れればよろしいかと思います。
 PCなどからでは、ブラウザーで文化放送のサイトに行く方が早いです。
  https://www.joqr.co.jp/
 上のほうに並んでいるメニューのなかの「ポッドキャスト」をクリックするとポッドキャストで聞くことができる番組が出てきます。今のところ、『朝の小鳥』がいちばん上にあります。クリックすれば、最新の放送内容を聞くことができます。
 PCオーディオで聞くことで、より野鳥の鳴き声の魅力が伝わることと思います。作るほうも、より雰囲気が伝わる音作り、シナリオの内容も魅力的なものにしていきたいと思っています。

追記:F野さんから「当時は中学生だったとおもいます。最初の録音はシジュウカラでした。今でも、蒲谷さんの文章の幾つかは覚えております。クロツグミの声をエーテルの香りにも似たとか、亜高山の特集でルリビタキの声を風と霧に磨かれた、とか凄く気に入っております。ウグイスでは、「笹鳴きの 古家ばかりか 雑司ヶ谷」高浜虚子 短い文章でも考えて作っておられると、思います。」とのメールをいただきました。高校生の頃を中学生の頃に訂正いたします。それにしても、50年以上経っても覚えているF野さんも凄いけど、それだけ印象深いシナリオを書いていた蒲谷先生も凄い!


2021年1月 7日 (木)

ツグミの鳴き声-染井墓地

 六義園が休園なので、近くの染井墓地へ行きました。
 墓地の良いところは空が広いことと、人が少ないことですかね。少なくとも三密は避けられます。
 染井墓地そのものは樹木は少ないのですが、隣接する岩崎家の墳墓の敷地は六義園より高い樹木が生い茂っています。ただ、高い塀に囲まれ立ち入り禁止です。そのため、鳥たちはこの緑地と墓地を行ったり来たりしています。
 本来サンクチャリーは、公園の一角に人が立ち入ることができないスペースを設け、鳥たちの逃げ場と餌場を提供するというもの。岩崎家の墳墓の敷地は、サンクチャリー効果が絶大で、墓地全体に鳥が多いことになります。
 多かったのは、ツグミです。
 3,40羽は、いたでしょうか。たえず、数羽の群れが行き交っています。
 日本海側では、大雪の報道が伝えられています。このツグミたちの群れは、雪に追われてやって来たのでしょうか。
 ということで、ツグミの鳴き声を録音してみました。40分あります。これまで、これだけ長時間ツグミの声を録音したことはありません。
 ツグミならいつも鳴いているのでは思われるかもしれません。しかし、ツグミが鳴いたからといって録音を始めても、数声で鳴き止み実際に録音できるのは一声がやっとです。活動的なツグミは、すぐに飛び去ってしまうため野鳥録音で難題な鳥の一つです。
 ですから、このような群れが飛び交ってくれるシーンは、かっこうの録音チャンスとなります。
 TASCAM DR-05で録音。ツグミの鳴き声のない部分をカット(間をつめています)、ボリュームのアップ、1,500Hz以下のノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

 鳴き合う声は、2声が多いことに気が付きました。ときどき3声もあります。こうして鳴き合うことで、群れの一体感を確認しあっている感じです。
 これが、芝生や田んぼのようなところで1羽になると、なわばりを守るために身体をぶつけ合うほどのケンカをするのですから、その違いは何なんでしょう。
 まだ、季節的に食べ物がたくさんあってなわばりを構える必要がない、群れの年齢構成の関係、樹木の多いところと開けた環境の餌資源の違いなどなど、考えられます。
 いずれにしても、染井墓地できびしい冬を乗り越えて欲しいものです。

2021年1月 3日 (日)

野鳥録音始め-スズメ

 正月なので、カミさんの実家に行って来ました。
 前回のスズメの録音が気になって、同じように水盤のそばに録音機を置いておきました。
 正月のため街はとても静かです。しかし、線路際の家なので電車の音の間にスズメが鳴いてくれるように2時間程度の長時間録音をしました。
 義弟がスズメへのお年玉でお米を少し撒いてくれました。さっそく、スズメがやって来て餌を見つけたときの声です。
 TASCAM DR-05で録音、録音ボリュームはいつもの70%程度、1,200Hz以下の低音の軽減、ノイズリダクションをかけています。

 なんとなく喜びが伝わってくる鳴き方です。
 その後、ネコが庭に近づいてきました。ネコへの警戒の鳴き声が録れました。録音状態と編集加工は同じです。


 緊張が伝わってくる鳴き声です。この鳴き声をふだんでも聞くことがありますが、ネコなどの天敵の姿が見えないことが多いです。私たちには見えない敵をいち早く見つけての警戒なのでしょう。今度、この鳴き声が聞こえたら辺りをよく探して見ることにします。
 新型コロナの蔓延のなか、活動が制約されています。しかし、こうしてスズメの録音をしてみるとまだまだやることが、身近にたくさんありそうです。野鳥録音に飽きることはないでしょう。
 どうぞ、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

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