« 『朝の小鳥』スタジオ収録-6月は浮島湿原 | トップページ | トラツグミと猛禽幼鳥か-六義園 »

2021年5月22日 (土)

中西悟堂はオオコノハズクの声を聞いたか?-その2

 紹介した中西悟堂の「オオコノハズクの鳴き声について」は、メインタイトルが「随筆四題」であったため見過ごしていた記事です。
 最初に見つけたのは、藤原広蔵さんの「オオコノハズクの鳴声について」です。同じ年の6号に掲載されています。実は、このタイトルは『野鳥大鑑』執筆のおりの参考文献としてリストアップしたあった記事です。『野鳥大鑑』では、主立った雑誌の12月号に載っている総目録をすべてコピーを取り鳴き声に関するタイトルを探して、私がマーカーで印をつけ編集者のM形さんがコピーを取ってくれました。それを、分類順にファイルケースに入れて執筆のさいに目を通すという作業をしました。
 タイトルとしては追認した記事にあたるこちらのほうをコピーしてあったのです。ですから、元の記事を読んだのは今回がはじめでした。
 しかし、藤原さんの記事も興味深いので、ご紹介いたします。
 藤原広蔵さんは、日本野鳥の会大阪支部の2代目支部長を務めた方です。前身の阪神支部は、京都支部に次いで昭和12年に創立された老舗です。野外識別の開祖ともいえる榎本佳樹や中西家書生岡田康稔らが幹事であり、その指導を受けています。支部の思い出のなかに、飼っていたオオコノハズクで木菟猟を実際に試した話があり、飼育をしていたようです。
 本題です。
 藤原さんは、
 一年通じて「フー」あるいは「ホー」と一声づつ鳴いた。
 「ホッ、ホッ、ホッ、ホッ」は、1年半ほど飼った間に1回だけ聞いた。
  「ポスカス」については、警戒したときに「フッ」とか「ホッ」とか聞こえる音を出し、続いて嘴を「カス、カス」と鳴らす。これを離れて聞くと「ポスカス」と聞こえる。
 ということで、ポスカスは鳴き声と嘴を叩く音の誤認ではないかと書いています。
 「中西註記」があり「(前略)『オーォ、オーォ』(尻が上がる)という優しい声があって、これは仲間に話しかける声である。さらに機嫌のいい時には、咽喉で声をころがすようにして『クルルルル、クルルルル』と鳴くことがあった。」と書かれています。残念ながら、ポスカスについてのコメントはありませんでした。
 私が聞いた嘴を叩く音は、「パッチ」という感じの音で鋭い印象がありました。このあたりはオノマトペの感覚の違いがありますので、なんとも言えません。ただ、当時のバードウォッチャーが関心を持っていた鳴き声であることは、間違いありません。

« 『朝の小鳥』スタジオ収録-6月は浮島湿原 | トップページ | トラツグミと猛禽幼鳥か-六義園 »

考証」カテゴリの記事

コメント

こんにちは

オオコノハズクの鳴き声について専門家の皆さん方苦労されていますね。

私も’17年までは名前すら知らない存在でしたが、近所の方からケガしたフクロウが居るとの連絡で、知り合いの獣医師さんに取り次いだのが最初でした。

その翌日山に架けたムササビ巣箱の中をUSBカメラで確認するとオオコノハズクが入っていてビックリしたものです。

それから、ネットで調べ「野原から」のブログ他に辿り着きましたが、当時はほとんどヒットしませんでした。今ではかなり増えています。

私の巣箱はその後4年連続でオオコノハズクが営巣し、3羽2羽4羽3羽と計12羽が巣立っています。その間営巣中の巣箱内をUSBカメラで録画して、You Tubeにも「山のシェアハウ巣」とか「野生のオオコノハズク」などのシリーズでUPしております。長時間の物は録画配信をしていました。


ひとつご紹介します。
「山のシェアハウ巣 4/16の疑問 愚問」
https://youtu.be/ytPyGR-Laik
チャットはコメント欄にコピペしています。

この動画は録画した音声をスペクトログラム表示しています。

ほかにもスペクトログラム表示した動画もいくつかあります。
が、どれも長い動画を素のまま流しています。
これは私の様な無知な者が持っていても宝の持ち腐れ、詳しい方知りたい方に活用していただきたいとの思いからです。

YouTubeの動画では良く分からない扱い辛いと、オリジナルの動画が必要でしたら、コピーして提供できます。総容量は2TB前後かと思います。

野生のオオコノハズクの巣内の映像は、おそらく私が一番保有していると、ひそかに自負しています。(笑)内容は行き当たりばったりはは否めないですが。
巣箱内でも時折り鳴いており、その鳴き声の意味も想像を巡らせています。


また、私なりに考えたことは、オオコノハズクは基本的に縄張りを持たない単独行動(あっても緩い縄張りと一握りの小集団)の鳥ではないかと思います。

主たる餌は豊富にあって食餌に困らないし、実際の個体数もかなり高密度で生息しているのではないかと。
従って大きな声量を必要とせずにひっそりと暮らしている。
繁殖期にパートナーと必要最小限のコミュニケーションができれば事足りるわけです。

そんな風に考えています。

長文失礼しました。

古庵様
 長文の報告、ありがとうございます。
 オオコノハズクの生活史についての報告はありません。
 できたら、論文にして発表して欲しいところです。
 なわばりを持たない、そのため大きな声量を必要としないというのは、可能性としてはありかもしれません。
 私は、オオコノハズクの本来の生息地は、明るい林、疎林であって、遮蔽物が少ないので低い声のほうが遠くまで届くためではないかと思っています。昔の武蔵野の雑木林のイメージです。などなど、いろいろ想像する余地がたくさんある鳥であることが、楽しいですね。

 

はじめまして。オオコノハズクの声について、ずっと疑問に思っていることがありまして、お尋ねしたいのですが、野鳥の会から出ているCD鳴き声ガイドや、バードリサーチの鳴き声図鑑のオオコノハズクの鳴き声は、私が30年ほど前に10メートル程の距離で聴いたオオコノハズクの声とは違っています。いわゆる犬鳴き、猫鳴き、木魚鳴きとは違う声です。4月10日から4月13日までの4日間、夕方6時30分頃から鳴き出し、夜10時を過ぎても鳴いていました。鳴き声を頼りに姿も確認しているのでオオコノハズクに間違いありません。その鳴き声は「ウォッ、ウォッ、ウォッ…」で、低くゆっくりとしたリズムで、段々音程が下がっていく尻下がりの鳴き声です。一旦鳴き出すと10秒から15秒程続いたと記憶しています。犬鳴きのような早くて大きく音程が下がるのではなく、木魚鳴きのように早くて一本調子の鳴き声でもありません。鳴き出しがちょっと鳩のようでもありました。その当時はレコーダーも無く、録音はできなかったのですが、今でもその声は、はっきり覚えています。こんなオオコノハズクの声をお聴きになったことはありませんか?

MIZU様
 コメント、ありがとうございます。
 ご案内のようにオオコノハズクが木魚鳴きをするというのがわかったのが、つい最近のことです。そのため、個体差、地方差、年齢差などの違いについては、よくわかっていません。こうした違いは、ほかの鳥ではたくさんいますので、オオコノハズクでも可能性があり、MIZUさんがお聞きになった鳴き声も何による違いなのか、興味のあるところです。
 また、オオコノハズクが定期的に繁殖している鳥取県や広島県では、木魚鳴きを聞いたという報告がなく、鳴かないこともあるのかとも疑問を持っています。
 いずれにしても、貴重な報告をありがとうございます。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『朝の小鳥』スタジオ収録-6月は浮島湿原 | トップページ | トラツグミと猛禽幼鳥か-六義園 »