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2021年10月13日 (水)

アオバズクの鳴き声-倍音の課題

 日本野鳥の会事務局のT岡さんから
「(アオバズクが)日の出近くで、ぼちぼち泣き止むというタイミングで、鳴き方が変わり、倍音?の入った声に変わりました。ややかすれた、色っぽい声になり、メスを誘っているのか?と勝手に想像してしまいます。一般的に、アオバズクは倍音が入った声で鳴くのでしょうか?」
 という質問をいただきました。だんだん、質問の内容が高度になってきて、そう簡単には答えられないものになってきました。
 ということで、倍音、またアオバズクの鳴き声について、調べて見ました。
 倍音の質問、かなり難問です。私自身、付け焼き刃の知識しかありませんので、間違っていたらごめんなさい。今までの知見からのコメントです。
 鳥の鳴き声によって倍音の有無、強弱があると思っています。蒲谷先生の時代の声紋表示では、倍音まで表示されませんでしたので、あまり語られることがありませんでした。しかし、コンピュータの発達により精密な分析が可能になった鳴き声の要素です。
 倍音があることで深みのある音、柔らかい音に聞こえますから、鳴き声の分析には重要な要素でもあると思っています。また、倍音の有無や強弱が、種類の識別の目安、個体識別の要素になると思います。
 アオバズクに限らず、近くで録音できると倍音が録れます。倍音がないと思っていたトラツグミも近くでクリアに録れたら倍音がかすかにありました。ですから、倍音は音が小さいため、音が大きく録れた場合、あるいは近くで録れた場合に得られると思っていました。しかし今回、アオバズクの倍音をチェックすると音の大きさより、鳴き方にあるかもしれないことがわかりました。
 私が録音できたアオバズクの音源をチェックしてみました。
 いずれも、新潟県粟島で録音。音声は、300Hz以下のノイズを軽減、ボリュームはそのまま、ノイズリダクションなどの加工はしていません。また、声紋は天地が0~3,000Hz、左右は0秒~約15秒です。
 粟島でアオバズクが鳴いている木の下に置いた録音機、これがいちばん大きく録れていた(-9db)には、1条の倍音が録れていました。

Brown-boobook1

 

 別の年に録音できた音の小さい音源ですが、倍音は4条ありました。

Brown-boobook2

 聞く限り倍音の多い方が少しこもった音に聞こえますが、大きな違いは感じません。
 別個体なのか、あるいは成長して声に張りがでるようになったのか不明ですが、音の大きさではないことになります。
 人間でも、甲高い声の出川哲朗と深みのある森本レオの違いがあり、声の魅力が異なるといったらわかりやすいでしょうか。
 これ以外、アオバズクの音源はたくさんありますが、倍音が表示されるほど大きく録れたことはなく、2例のみでした。
 なお、メインの音が-15dbの場合、1条目の倍音は-33dbでした。dbの計算は難しいのですが、ざっと10分の1のエネルギーしかない言えると思います。
 わずか2例ですが、T岡さんの録音のように倍音が出る鳴き方と出ない鳴き方をしている可能性もあるかもしれません。
 以前、日本鳥学会のポスター発表で、ツミの鳴き声で個体識別ができるというのがありました。いろいろな鳴き方の声紋が並んでいましたが、倍音はまちまちで、倍音の有無、強弱で個体識別の要素になるのではと指摘したことがあります。
 今のところ、同じ個体が倍音の有無、あるいは強弱の鳴き方をする、あるいは同じ種類でも倍音の有無や強弱があるという指摘は聞いたことがありませんので初知見になるかもしれません。
 倍音は意外と意外、大きな課題になるかもです。

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