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2021年12月

2021年12月26日 (日)

森田三郎さん-訃報

 森田三郎さんの訃報が伝えられてきました。
 毎日新聞では11月11日にお亡くなった記事があり、昨日(12月25日)の朝日新聞に追悼記事が掲載されているのをFacebook情報で知りました。朝日新聞の記事のURLです。リンクが切れる可能性がありますので、早めにご覧ください。
 https://www.asahi.com/articles/ASPDR76RBPDQUDCB009.html?fbclid=IwAR1Yhx1fKWt -og_ROO_qZSqs0bXb4J6E7FnMmtcnc8MUHETy6An8JBZObI
 青春時代を同じ場で過ごした者として、思い出話を書いてみました。
 千葉の干潟を守る会に参加したのは活動が新聞に紹介され、それを見た森田さんが代表の大浜清さんをたずねたのが始まりです。大浜さんから、たのもしい仲間が参加してくれるようになったと毎週集まっていた菊田公民会で紹介があったと思います。当時、大浜さんは平凡社の労働組合から出版会社の組合運動を行っていました。そうした流れのなかで自然保護運動に関わっていたことになります。ですから、森田さんは新聞配達をやっている勤労青年という運動にはもってこいの仲間ととらえたようです。ちなみに当時は、若い労働者の集まりなどが、もてはやされていた時代でした。
 私は、何度か谷津干潟や埋め立て地で森田さんに鳥を教えたことがあります。彼は、1,000を超えるコアジサシの巣を見つけて、その位置を地図にするような作業をしてくれました。調査の前にシロチドリの巣との区別を教えたのですが、区別することなく調べてしまい、結果データ的にはもったいない記録となってしまいました。どうも科学的にとらえることは、得意ではなかったようです。
 当時としては熱くて感情のままに保護運動を行った情熱家として、もてはやされたことになります。しかし、習志野市長室にゴミをぶちまける暴挙をのちに行うなど、すでにトラブルの根がありました。
 現在の津田沼高校から先は広大な埋め立て地が広がっていました。その埋め立て地の水たまりでセイタカシギが繁殖したことがあります。今ではセイタカシギは東京湾各地で繁殖していますが、最初の記録となります[注1]。見つけた森田さんは「俺のセイタカシギ」という認識でした。日本で数例目の繁殖であり、まだ謎の多いセイタカシギの生態を調べ保護するために、後輩たちが標識用の脚輪を付けました。ところが、俺のセイタカシギに脚輪を付けたということで後輩が殴られる事件となります。脚輪についての説明不足などあったかもしれませんが、暴力を振るのは論外です。この事件から、私たちとも決別したといってもよいでしょう。
 また、同輩が彼の家に行ったら「国粋主義的な本が並んでいた」とびっくりして話てくれました。そして、革新的な大浜さんとも決別していくことになります。
 彼が人が変わったと感じたのは、森田さんが新聞の記事になってからではないと思います。当時、マスコミの取材がたくさんありました。おもに大浜さんや石川敏雄さん(千葉大学名誉教授、千葉県自然保護連合代表)、ときに私が対応しましたが、対応できないときに大浜さんが森田さんにふったことがあります。どうも、これがいけなかったようです。当時、自然保護を訴えるため新聞に載るのは、仲間では当たり前のことでした。しかし、森田さんにすれば今まで自分が配っていた新聞に自分の記事が載ったことになります。舞い上がったというか、その後はこうした記事になるように意図した活動が多くなったと感じます。
 現在、Googleで「森田三郎」を検索すると「“たったひとりで谷津干潟を守った”はウソだ!三番瀬」が上位に出てきてしまいます。これは、2009年12月8日に放送されたNHKのドキュメント番組への反論です。また、検索の下位には『どろんこサブウ-谷津干潟を守る闘い』(松下竜一・1990)[注]、『わが青春の谷津干潟』(本田カヨ子・1998)と彼を取り上げた著作のタイトルが上がってきます。いずれも彼一人が谷津干潟を守ったような内容のNHKのドキュメント同様、彼の本質に迫るものはなく、美談で終わっているのは残念です。番組では企画段階、出版の企画では原稿段階で本人のチェックを受けているはずです。谷津干潟は多くの人が関わり、その努力の結果、残ったのだと私は確信しています。このことをなぜ彼から言って、活動の事実を伝えようとしなかったのでしょうか。もし、「皆さんの活動のおかげもあって谷津干潟が残った」の一言があれば彼の評価も変わったことと思います。
 森田さんは、何が問題なのか仲間で話し合ったことがあります。結論のひとつは、コンプレックスの人という評価でした。とくに学歴についてのコンプレックスが強かったと異口同音に言われました[注3]。たしかに、大浜さんはじめ活動に参加した大人たちはインテリでしたが、誰がどこの大学を出たかなど私は知りません。私たち東邦大学生は、無名の大学に在籍しているコンプレックスさえありました。
 しかし、私が彼から言われたのは「学生は昼からマージャンをしている。もっと干潟を守るために活動すべきだ」です。彼の頭のなかには、学生はヒマで金があり、昼からマージャンをしていると思い込んでいました[注4]。
 その後、干潟の保護運動は全国に広がり干潟シンポジウムの実施、さらにはラムサール条約の登録湿地など国際的な活動と展開していきます。また、谷津干潟の保護については谷津干潟自然観察センターが自然観察会はもとより干潟まつりや講演会などのイベント、ゴミからアオサの回収などの環境管理を行ってきました。しかし、こうした場に彼が来ることはありません。
 森田三郎さんが、谷津干潟で何をしたかったのか?こうして考えると、わからなくなってしまうのは、私だけでしょうか。
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 写真は、まだ造成前の谷津干潟に森田さんが立てた看板。日本野鳥の会の名前がありますが、承諾はとられていません。愛国無罪の感覚で勝手にやってました。
 
注1:このセイタカシギについては、『セイタカシギ大空を飛ぶ―荒地に生まれた4つのいのち』 (1979・国松俊英)に詳しい。
注2:松下竜一さんに会うために大分県中津をたずねたことがあります。たいへん人見知りをする人で、著作の印象とは異なりました。ちなみに松下さんは、出版前に谷津干潟にも来ていませんし森田さんとは直接会ってはいないはずで、どれだけ交流があったか不明です。プロレタリア・エッセイストとも言える松下さんとしては、謎の仕事です。
注3:『わが青春の谷津干潟』(本田カヨ子・1998)によれば、森田さんは東洋大学文学部英米文学科に在籍、数ヶ月残して退学してます。退学の理由は、当時の学生運動による大学の荒廃にいやけをさしたためとなっています。今回、彼が学生であったのを始めて知りました。
注4:たしかにそういう学生もいたと思いますが、私は生涯マージャンをしたことはありません。それに、理系のため出席しないと単位を落とす実験が多く忙しかったのです。また、実験のない日は、渋谷の青山にできたばかりの日本野鳥の会の事務所に行って、野鳥誌の発送などのボランティアをしていました。同じボランティアのなかには、多摩川の自然を守る会、荒川の自然を守る会などの同じような学生が集まっていて、彼らが千葉の観察会や調査を手伝ってくれました。

2021年12月24日 (金)

貴方は昭和のバードウォッチャー?

はじめに
 昭和時代が終わって30数年たってしまいました。この年の瀬、昭和生まれの私にとって昭和は遠くなりにけりと実感いたします。
 平成時代、日本野鳥の会の会員が1万人を超えて、アウトドアブームのなかバードウォッチャーが増えました。あれから30数年。バードウォッチングの傾向も変わり、新しい流れを感じます。当時、バードウォッチングを始めた友人の家に行くと、昭和時代に発行された本が並んでいます。その後、発行された新しい知識の詰まった図鑑や解説本は見当たりません。話をすると懐かしい昔話ができますが、昭和のバードウォッチャーがとり残されていることを感じました。
 ということで、貴方は昭和のバードウォッチングの知識で止まっていませんか?
 まずは、バードウォッチングの昭和度をはかるためのチェック項目です。昭和度が高ければ、これからは積極的に新しい知識を取り入れるようにしていただければと思います。そうすれば、野鳥をさらに楽しめると思います。お試しください。

 

■機材編
 望遠鏡のことをプロミナーという
 使用している双眼鏡は、ポロタイプの8×30
 オメガブランドの双眼鏡を使ったことがある
 野鳥録音は、パラボラが必要だと思っている
 録音機を回すと言ってしまう
 かつてのニコンの望遠レンズ、フォーカシングユニットの意味がわかる
 カメラの感度をASAと言ってしまう

 

■鳥学編
 伊豆沼で1万羽のマガンの中から2,3羽のシジュウカラガンを見つけるが楽しみだった
 北海道に行ったら、シマアオジだらけだった
 ツルシギ100羽の群れを見たことがある
 カワセミを「清流の宝石」だと思っている
 カッコウやホトトギスの仲間をトケンと言ってしまう
 北海道のタンチョウは、まだ1000羽以下だと思っている
 鳥島のアホウドリの数は500羽だと思っている
 オオムシクイをコムシクイだと思っている
 ニシオジロビタキをオジロビタキだと思っている
 ハヤブサ類はインコ類に近い仲間だと知らない
 リュウキュウコノハズクをセレベスコノハズクだと思っている
 日本のアホウドリは、2種類いることを知らない
 リュウキュウサンショウクイは、本州で越冬していることを知らない
 キジは、一夫多妻性だと思っている
 ジョウビタキは、日本で繁殖する鳥になったのを知らない
 イソヒヨドリは都会や内陸の鳥になったのを知らない
 日本三大探鳥地は、軽井沢、須走、比叡山だ

 

■一般教養編
 「鳥の群れがかぶる」の意味がわかる
 「木化け」が通じないで困ったことがある
 マイフィールドをホームグラウンドという
 野鳥図鑑は、1冊あれば良いと思っている
 野鳥への餌付けは、良いことだと思っている
 バードウォッチング専門誌の「Birder」を買ったことがない、そもそも存在を知らない
 ウンドミル(発電用風車)が野鳥に大きな影響を与えていることを知らない
 マイクロプラスチックが海鳥に悪い影響を与えていることを知らない
 太陽光パネルが自然にどのような影響を与えているか知らない
 旅行会社のバードウォッチングツアーの参加したことがない
 カラスの群れを見るとヒッチコックの映画「鳥」を連想する
 日本野鳥の会は財団法人だと思っている
 日本野鳥の会といえば、紅白歌合戦を思い出す
 日曜日の朝のNHK番組「さわやか自然百景」を「自然のアルバム」と言ってしまう
 
□採点
 あえて点数を付けません。お楽しみいただければ幸いです。これだけ引っかかった、たいしたことなかったと自己採点してください。その自己判断そのものが、昭和のバードウォッチャーの評価かもしれません。
 こうやって列記してみますと、最近のバードウォッチャーでもひっかる設問があるかもしれません。最新の研究の成果、鳥を取り巻く環境問題など、これらは情報を積極的に取り入れようとしないと入ってこない事柄です。
 日本野鳥の会の「野鳥」誌、文一総合出版社の「Birder」誌、日本鳥学会の学会誌、バードリサーチのメールマガジンなど。また、Facebookで山階鳥類研究所など学会系の方が発信しているニュースも最新の研究を知ることができます。ただ、これにはお金も時間もかかります。珍鳥ポイントで噂される不確かな情報、ネットに流される害毒とも言える書き込みに比べれば、それだけの価値があると思います。
 ネット上や珍鳥ポイントでの噂話の正誤を判断するのは、ご自身の知識と経験しかありません。昭和のバードウォッチャーから脱去するためにも日々精進です。

2021年12月16日 (木)

アップルウォッチで録音-六義園

 一足早いクリスマスプレゼントをカミさんからもらいました。新型コロナが収まっているこの狭間に好みのアップルウォッチを選ぶためアップルストアに行きました。タイプはSE、40mm、色はスペースグレーです。
 1960年代のアニメ『未来からきた少年 スーパージェッター』でジェッターが流星号を呼ぶ腕時計型の通信機に憧れたものです。アップルウォッチをはめると、気分は少年ジェッターです。
 ジェッターの通信機は30秒間時間を止めることができる他は、流星号を呼べる程度の機能しかありません。しかし、アップルウォッチは音楽が聞けて、天気予報から体調管理、リンクさせたiPhoneから写真が撮れて、メールも送れます。そして、録音ができることがわかりました。他にもまだ使い切れない機能がありますが、腕にコンピュータを付けた感じです。
 ということで、録音を試してみました。
 録音は簡単、アプリのボイスメモをタッチして、●い赤いボタンを押すだけです。ボタンを押すことで録音がはじまり、録音時間がカウントされて行きます。録音状態では■いボタンになりますので、ストップは■を押します。これで、ファイル名「録音」つぎは「録音2」が付いて保存されていきます。
Image1  
 六義園で、ヒヨドリの鳴き声を録ってみました。鳥との距離は10数mです。録音データは、モノラルでm4aのファイルができていました。問題は、このファイルをどうやってPCに送るかでしたが、意外と簡単でした。まず、自動的に手元のiPhoneに転送されていました。このファイルをiPhoneから自分宛のメールに添付すれば、簡単に送れました。なんとも便利な時代になったものです。
 ボリュームを少しアップしています。低音のノイズなどは、そのままです。m4aからmp3に変換しています。

 ヒヨドリの甲高い鳴き声を違和感なく録音されていました。なお、音域は0~16,000Hzまで録音されていましたので、野鳥の鳴き声は十分にとらえられます。本日は、風もなく森のなかでしたので風防は必要ありませんでした。風防が付けられませんので、風の或る日は録音は難しいかもしれません。また、腕に付けているので衣擦れが入ります。長め録音して、ノイズをカットすることでクリアな音源になると思います。
 アップルウォッチは、いざというときや貴重な録音のバックアップとしてならば、十分に耐える録音ができると思います。

2021年12月15日 (水)

『ジョウビタキ・ルリビタキ・オジロビタキ』ーご紹介

 文一総合出版社よりBIRDERスペシャル『ジョウビタキ・ルリビタキ・オジロビタキ』が送られて来ました。とてもきれいな構成で、情報満載の本です。
 4月に発行された『オオルリ・キビタキ・サンコウチョウ』の姉妹編、続編という企画です。こちらが、春から夏の魅力的な野鳥の集大成としたら、今回の企画は公園や秋から冬に公園や里山で出会えるより魅力的な野鳥たちということになります。

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 私は「冬のヒタキを聞き分けよう」ということで、出会いの多いジョウビタキとルリビタキ、そしてキビタキの地鳴きによる区別のポイントを書いています。なぜか近年、キビタキの遅い記録が散見するようになり、キビタキの地鳴きも語っておかないといけない時代になってしまいました。
 他の記事では、オジロビタキとの識別など最近記録の増えたニシオジロビタキについて、さらに記録の増えたジョウビタキの繁殖の様子や現状は、これからバードウォッチングを楽しむ上に必要な知識と情報となります。
 是非とも、ご一読をお勧めいたします。

アマゾンのURL.
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%83%93%E3%82%BF%E3%82%AD%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%93%E3%82%BF%E3%82%AD%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%82%B8%E3%83%AD%E3%83%93%E3%82%BF%E3%82%AD-BIRDER%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB-BIRDER%E7%B7%A8%E9%9B%86%E9%83%A8/dp/4829975121/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%93%E3%82%BF%E3%82%AD&qid=1639556682&s=books&sr=1-2

2021年12月11日 (土)

伊香保の謎の鳥-鳴き声をアップ

 伊香保の謎の鳥は、蒲谷鶴彦先生のご存命の時より謎のままです。
 群馬県在住の森野洋一郎さんが録音され、蒲谷先生におたずねになったことがきっかけです。しかし、森野さんとは連絡が取れなくなり、謎がさらに深まったと当ブログで記事にしました。

 http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2017/06/post-ed5b.html

 幸いなことに、このブログの記事を読まれた森野さんからコメントをいただきました。その後も連絡が可能となり、なんともインターネットの時代の便利さを改めて認識したしだいです。
 今回、森野さんから謎の鳥の音声をアップすることにより謎の解明に近づけるのではないかとご提案をいただきました。ということで、このブログにアップすることで、多くの方に聞いていただきたいと思います。また、同じような鳴き声を聞いた、あるいは録音できたという情報が寄せられることを期待しての公開です。

 音源の記録は、下記の通りです。
 録音:森野洋一郎
 日時:2001/05/26 03:50~04:50
 場所:群馬県立伊香保森林公園
 マイクから数百メートル先を、移動しながら断続的に鳴いていた。
 SONY TCD-D3(LINE INP), SONY ECM-959
 D3ヘッドアンプのノイズが多く、53dB 超低ノイズマイクアンプ使用。

 姿は、カッコウ、ホトトギスの仲間に見えたとのことです。
 そのため、ツツドリの亜種ではないかという説があることを紹介しておきます。
 ただ、ツツドリの分類がここ数年で変わっていますので確認しておきます。
 かつては、ツツドリはヨーロッパ東部から中国、日本まで繁殖分布しているCuculus saturatusとされていました。英名はOriental Cuckoo、またはHimalayan Cuckooが使われていました。日本のツツドリもこの学名が使われ、英名はOriental Cuckooでした。ただ、この種には亜種がいくつかあるとされていました。そのため日本のものは、亜種とした場合C. s. horsfieldiです。なお基亜種は、C. s. saturatusとなり、ヒマラヤから台湾まで繁殖分布しているグループとなります。
 参考のために亜種の時代の分布図を上げておきます(Dement’ev, G.P. & et al・1969)。

Oriental-cuckoo2

 最新の分類では、日本のツツドリの学名は、Cuculus optatusとなっています。そして、Cuculus saturatusの学名は、基亜種であったヒマラヤツツドリ(ヒマラヤカッコウと表記されていることもある)に付けられ別種としてあつかわれています。
 かつての種ツツドリは、ツツドリとヒマラヤツツドリ、スンダツツドリ(暫定の和名です。英名:Sunda Cuckoo、学名:Cuculus lepidus)
に分けられ、それぞれ種として分類されることになりました。このような改訂は、ツツドリばかりでなく多くの種で行われています。そのため、数年前の図鑑の記述では、旧称となっていることがありますので注意が必要となります。
 かつて蒲谷先生は、中学生が録音したセグロカッコウの鳴き声を同定し、日本初記録として発表されました(蒲谷鶴彦・1978)。結果、日本産鳥類が1種増えたことになりました。そして、今ではセグロカッコウの鳴き声が知られるようになり、各地で発見されるようになりました。
 森野さんから、お仲間の斎藤さんが録音されたセグロカッコウの鳴き声も送られて来ましたので、違いを知っていただくためにアップしておきます。セグロカッコウとの違いを聞き比べていただければと思います。

 音源の記録は下記の通りです。
 録音:斎藤 譲
 日時:2017/06/05 07:50~
 場所:群馬県立伊香保森林公園つつじの峰
 SONY ILCE-6000(α6000)AVCHD ハイビジョン動画から音響。群馬県で初めてのセグロカッコウ鳴き声確認、樹林帯で姿は未確認。


 謎の音声の公開により、日本産鳥類が1種類増えることになると、野鳥録音の醍醐味がさらに広まると思います。
 森野さん、斎藤さん、ありがとうございました。

参考文献
Dement’ev, G.P. & et al 1969 Birds of the Soviet Union Vol.I Israel Program for Scientific Translations
蒲谷鶴彦, 1978 セグロカッコウ(日本初記録)が鳥取県下に!-中学生がその声の録音に成功-野鳥 43(8):24-26. 日本野鳥の会

2021年12月 9日 (木)

『魅力的な鳥達と自然-千島列島-』のご紹介

 4ヶ月ぶりに六義園へ行きました。
 センター長に野鳥カレンダーを持って挨拶に行くと、たまっていた鳥の質問や情報の交換で盛り上がりました。そして、写真集『魅力的な鳥達と自然-千島列島-』をいただきました。
P1110966
 私は、筆者の野口好博さんとはFacebookのお友達で、この本を出されたことはうかがっていました。センター長とは、ほんとうのお友達で、この本を何冊がもらったのでお裾分けということでいただきました。
 私も千島に行っています。2001年6月21日~30日ですから、もう20年前になります。当時は、DAT+ステレオマイクで録音していた時代です。カミさんのツテでアメリカのエコツアーの船に乗って、アメリカ人のバードウォッチャー100人という規模のクルーズでした。ですので、千島からカムチャッカに上陸し、そのあとはアメリカ人といっしょにアラスカに行き、アンカレッジ、デナリーでバードウォッチングをしてシアトル経由で帰ってきました。私にとって人生最高のバードウォッチングを楽しんだ思い出があります。
 千島では、こけしのように並んだエトピリカの群、ゴムボートのそばまで来て鳴いたウミバト、島から煙が立ち上っているかと思ったらシラヒゲウミスズメの群、水平線まで埋め尽くしたフルマカモメの群は臭かった。壁の飾りのようにハシブトウミガラスの巣がある真下で鳴くのを待ったなどなど思い出があります。日本のこんな近いところに海鳥の楽園があるのかと、思い知らされたツアーでもありました。
 しかし、20年も経つと記憶が薄れてきたのを蘇らせてくれたのは、この本です。ちょうど私が行った季節に野口さんも行っていますので、鳥たちのようすは変わりません。私たちは島にはゴムボートで渡りましたが、基本は大きなクルーズ船でしたので鳥との距離がありました。野口さんは、小型の船なので鳥との距離が近く写真を撮るのはぜっこうの条件の下でツアーをされています。そのため、鳥の写真は生き生きとした表情をとらえられています。
 日本の隣にこんなにたくさんの鳥がいることがわかる写真集です。関心のある方にはぜひ目を通していただきたい本です。
 なお、自費出版のためアマゾンでは扱っていません。ホビーズワールドのネットショップで入手可能です。下記URLで、どうぞ。
https://www.hobbysworld.com/item/25014502/

 

2021年12月 6日 (月)

不明の鳴き声-六義園

 先週、六義園に向けて早朝、タイマー録音をしてみました。
 機材のチェックと、あわよくばイソヒヨドリが入るのではないかと思っての試みです。 早朝に地震のあった12月3日です。日の出が、およそ午前6時30分でしたので、4時30分から7時30分の設定です。
 ハシブトガラスは、4時50分には鳴き始めてねぐら立ちの準備を始めていました。ヒヨドリが鳴きはじめたのは、6時20分で日の出時間に近く、かなり明るくなってからです。
 ところで、6時34分に入っていた声が不明でした。ほぼ日の出時間に鳴いているのも面白いです。
 DR-05で録音、ボリュームのアップ、2,000以下の低音の軽減、ノイズリダクションをかけています。

 最初はハクセキレイかと思ったのですが、クスかケヤキの木のなかですので、ハクセキレイがいる可能性が低い環境です。シジュウカラが、いろいろな鳴き声を出すことがありますので、シジュウカラの可能性が高いとも思いました。しかし、この前後にシジュウカラの鳴き声はなく、このような声で鳴くシジュウカラに出会ったことはありません。
 たまたまメールのやりとりをした録音仲間のF野さんにも聞いてもらいましたが「似たような声を聞いたような気もしますが、よく分りません」とのこと。たしかによくある鳴き声ですが、これだといった種名が頭に浮かばないもどかしさがあります。
 備忘録として、アップしておきます。

2021年12月 5日 (日)

『朝の小鳥』スタジオ収録-来年1月はききなし

 本日は、文化放送の『朝の小鳥』のスタジオ収録でした。私の都合で、イレギュラーに日曜日の収録となってしまいました。スタッフの皆さん、すみませんでした。
 じつは『朝の小鳥』では、ききなしの話は封印されていました。というのは以前、S木プロデューサーの時にききなしをシナリオに盛り込んだことがあります。そのとき、S木さんから「言われるききなしのように聞こえません。バードウォッチャーの方は、そう聞こえるならばしかたないですけど・・・」と言われて以来、パスしてきました。
 たしかに聞き直して見ると、ききなしのとおりに聞こえません。私の持って行った音源がききなしとおりに鳴いていなかったことがあると思います。鳴き声には多数のバリエーションがあって、ききなしどおりに鳴くパターンを準備するべきだったことになります。
 また、自然のなかでバードウォッチングの先輩から「こう聞こえるだろ」と言われると説得力があること、あるいは「そうは聞こえない!」と反論できないこともあるかもしれません。
 ということで、私の音源も増えたことで、ききなしどおりに鳴くパターンを選び構成してみました。また、やさしく語りかけるような鈴木さんのナレーションのフォローでの説得力で行けると思います。
 さて、ききなしどおり聞こえるでしょうか。聞いてのお楽しみです。

 

 2022年1月 放送予定
     2日  センダイムシクイ
     9日 コジュケイ
    16日 イカル
    23日 ツバメ
         30日  フクロウ

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