伊香保の謎の鳥-鳴き声をアップ
伊香保の謎の鳥は、蒲谷鶴彦先生のご存命の時より謎のままです。
群馬県在住の森野洋一郎さんが録音され、蒲谷先生におたずねになったことがきっかけです。しかし、森野さんとは連絡が取れなくなり、謎がさらに深まったと当ブログで記事にしました。
http://syrinxmm.cocolog-nifty.com/syrinx/2017/06/post-ed5b.html
幸いなことに、このブログの記事を読まれた森野さんからコメントをいただきました。その後も連絡が可能となり、なんともインターネットの時代の便利さを改めて認識したしだいです。
今回、森野さんから謎の鳥の音声をアップすることにより謎の解明に近づけるのではないかとご提案をいただきました。ということで、このブログにアップすることで、多くの方に聞いていただきたいと思います。また、同じような鳴き声を聞いた、あるいは録音できたという情報が寄せられることを期待しての公開です。
音源の記録は、下記の通りです。
録音:森野洋一郎
日時:2001/05/26 03:50~04:50
場所:群馬県立伊香保森林公園
マイクから数百メートル先を、移動しながら断続的に鳴いていた。
SONY TCD-D3(LINE INP), SONY ECM-959
D3ヘッドアンプのノイズが多く、53dB 超低ノイズマイクアンプ使用。
姿は、カッコウ、ホトトギスの仲間に見えたとのことです。
そのため、ツツドリの亜種ではないかという説があることを紹介しておきます。
ただ、ツツドリの分類がここ数年で変わっていますので確認しておきます。
かつては、ツツドリはヨーロッパ東部から中国、日本まで繁殖分布しているCuculus saturatusとされていました。英名はOriental Cuckoo、またはHimalayan Cuckooが使われていました。日本のツツドリもこの学名が使われ、英名はOriental Cuckooでした。ただ、この種には亜種がいくつかあるとされていました。そのため日本のものは、亜種とした場合C. s. horsfieldiです。なお基亜種は、C. s. saturatusとなり、ヒマラヤから台湾まで繁殖分布しているグループとなります。
参考のために亜種の時代の分布図を上げておきます(Dement’ev, G.P. & et al・1969)。
最新の分類では、日本のツツドリの学名は、Cuculus optatusとなっています。そして、Cuculus saturatusの学名は、基亜種であったヒマラヤツツドリ(ヒマラヤカッコウと表記されていることもある)に付けられ別種としてあつかわれています。
かつての種ツツドリは、ツツドリとヒマラヤツツドリ、スンダツツドリ(暫定の和名です。英名:Sunda Cuckoo、学名:Cuculus lepidus)
に分けられ、それぞれ種として分類されることになりました。このような改訂は、ツツドリばかりでなく多くの種で行われています。そのため、数年前の図鑑の記述では、旧称となっていることがありますので注意が必要となります。
かつて蒲谷先生は、中学生が録音したセグロカッコウの鳴き声を同定し、日本初記録として発表されました(蒲谷鶴彦・1978)。結果、日本産鳥類が1種増えたことになりました。そして、今ではセグロカッコウの鳴き声が知られるようになり、各地で発見されるようになりました。
森野さんから、お仲間の斎藤さんが録音されたセグロカッコウの鳴き声も送られて来ましたので、違いを知っていただくためにアップしておきます。セグロカッコウとの違いを聞き比べていただければと思います。
音源の記録は下記の通りです。
録音:斎藤 譲
日時:2017/06/05 07:50~
場所:群馬県立伊香保森林公園つつじの峰
SONY ILCE-6000(α6000)AVCHD ハイビジョン動画から音響。群馬県で初めてのセグロカッコウ鳴き声確認、樹林帯で姿は未確認。
謎の音声の公開により、日本産鳥類が1種類増えることになると、野鳥録音の醍醐味がさらに広まると思います。
森野さん、斎藤さん、ありがとうございました。
参考文献
Dement’ev, G.P. & et al 1969 Birds of the Soviet Union Vol.I Israel Program for Scientific Translations
蒲谷鶴彦, 1978 セグロカッコウ(日本初記録)が鳥取県下に!-中学生がその声の録音に成功-野鳥 43(8):24-26. 日本野鳥の会
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コメント
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松田道生 様
この度は、トケン不明種及びセグロカッコウの鳴き声を、とりあげて戴きありがとうございました。
野鳥の鳴き声や囀りに興味を持っている方が、一人でも多く聞いてくれると嬉しいです。
投稿: 森野洋一郎 | 2021年12月12日 (日) 09時00分
森野洋一郎様
音源の公開、ありがとうございます。
発見当時のネット環境とは、目を見張る広がりをみせています。
それだけに新たな知見が発見されることを期待しております。
重ねてお礼申し上げます。
投稿: まつ | 2021年12月12日 (日) 09時45分