« 2022年8月 | トップページ | 2022年10月 »

2022年9月

2022年9月28日 (水)

まぼろしの図鑑刊行-ご案内

 「小林重三の絵が大量に見つかった!」と興奮した電話をもらったのはついこの間のような気がします。
 日本野鳥の会をリタイアした飯塚利一さんはのんびり鳥でも見ているのかと思ったら、蜂須賀正氏の別荘跡地をたずね、元使用人が所有していた重三の原画を探し当てるなど、まるで私立探偵のような活動をしています。
 その飯塚さんの話では、中西悟堂家の所有する遺品のなかから、ごっそりと重三の絵が出てきたとのことでした。中西家では大事なものだからと言い伝えられていた遺品で、大切にするあまり奥の奥にしまわれていたようです。
 イラストを調べて見ると、戦前に企画されていた『野鳥ガイド』という図鑑のために描かれた原画であることがわかりました。このたび、戦前に描かれて、突如としてタイムスリップしたように発見された重三のイラストが現代に蘇り出版されました。
2_20220928180001
 そもそも『野鳥ガイド 上巻陸鳥編』(1938年・日新書院)は、戦前に発行された数少ない図鑑で、それだけにかなり売れたようです。私の蔵書の奥付には初版発行が昭和13年、翌年の14年には4版を重ねています。
 ただ、図版は線画のため解説文をよく読まないと色はわかりません。イラストは平岩康熙。中西家の書生だったとのことですが、生没不明でよくわからない人物です。イラストの鳥の形は、とても良いのですが、いかんせん線画の荒さが目立ち、タッチに素人っぽさを感じさせるイラストです。悟堂さんの解説はていねいで、読み応えがあります。また、サンコウチョウは村落の鳥の項にいて、ヒヨドリやキジバトが森林の鳥になっているのは、鳥たちをめぐる世界の変化を知ることができます。
 ただ、売れたと言われているのになんで上巻陸鳥編で終わってしまい、下巻水鳥編が出版されなかったのか。長い間、疑問でした。今回のイラストの発見で、実はカラー化と水鳥 編の企画があったことがわかりました。戦中の動乱と戦後の物資不足のなかで、埋もれてしまったことになります。
 今では、私でさえ鳥の図鑑を手がけていますし、アマゾンで「野鳥図鑑」で検索すれば、ずらっとお歴々の手がけた野鳥図鑑が並びます。しかし。1960年代に日本鳥類保護連盟が『野外観察用鳥類図鑑』の企画を出版社に持ち込んだところ、鳥の図鑑など売れないと”けんもほろろ”だったと伝え聞いています。当時、連盟会員が3000人、日本野鳥の会の会員も同じくらいの時代ですから、出版社としても、乗れる企画ではなかったことになります。その時代のこと、悟堂さんの存命中には浮揚することのない幻の企画のままとなってしまったことになります。
 今回の発見と出版は、それを補うにあまる大事業となりました。
 詳しい内容については、アップしたチラシの画像をご覧ください。また。飯塚さんとお仲間の自費出版の形式となり、流通には乗っていません。画像の申込みハガキの内容を飯塚さん宛にお送りいただくと、本と請求書が送られてくる手はずになっています。それに従い、送料と代金を支払うことになります。
最後まで手間のかかることとなってしまいましたが、次世代に野鳥の世界の財産をつなぐために個人の力の強さを感じる事業でもあります。
 どうぞ、皆さまもお買い求めいただき、お力添えをいただければと思います。
1_202209281803011_20220928180302

2022年9月22日 (木)

『朝の小鳥』スタジオ収録-10月は神島

 昨日は『朝の小鳥』のスタジオ収録でした。
 来月のテーマは、三重県の神島です。申しわけございませんが、このコロナ禍と私の体調から思うように取材ができず、過去の使用していない音源を元に構成しています。
 神島の取材は、まだDATで録音していたの時代で1996年10月です。亡くなってしまった鳥友の樋口行雄さんと鳥羽市から神島を案内してもらった思いの出の取材です。
 いつも不思議に思っているのですが、タカの渡りが早まったことについて、あまり語られていません。伊良湖岬、神島ルートでサシバが10月に渡るというのが、発見されたのは1970年代のことです。当時は、渥美半島にある汐川河口のシギチドリが有名で、渡り鳥を見に行った地元の方が、たまたま伊良湖岬で休んでいるときにサシバが渡って行くのを発見して、知られるようになりました。
 私も当時、4,5回は通ったでしょうか。いつも汐川河口のシギチドリとセットのバードウォッチングを楽しんだものです。ただ、多いと500人もののバードウォッチャーが集まるようになりましたので、人の少ない神島に行ったことになります。今までの経験から10月10日を目指して行っています。
 ところが、最近の白樺峠などの情報を見ると、9月上旬から渡りが見られ、中旬が最盛期となっています。およそ1ヶ月早くなっています。
 実は、伊良湖岬も早く行けばもっと渡っているのではないかと思い、9月20日前後に行ったことがあります。残念ながら1羽のサシバも渡らず、やはり10月中旬でなければダメだと思ったものでした。
 9月に渡りが見られるのは、白樺峠だけではなく各地のことですから、渡りのタイミングは変化するものなかのか、興味のあるところです。
 ということで、神島の野鳥たちをお楽しみいただければ幸いです。

 

2022年10月 放送予定
2日 サシバ
9日 ヒヨドリ 
16日 メボソムシクイ
23日 ウグイス
30日 スズメ

2022年9月17日 (土)

Birder誌11月号ー投稿のご案内

 退院しました。想定される副作用ですみました。今後は、通院しての治療が続きますので、まだ先は長そうです。
 さて、入院前に入稿し、入院中に校正依頼のあったBirder誌11月号が発行されました。私は、特集「探しに行こう秋の渡り鳥」のなかの「声で探す秋の鳥たち」4ページ分を担当しています。

P1120171

 実は、5月号の春の渡り鳥の特集のときに、秋があるとは思いもつかず、ネタを使いきってしまいました。編集部からは、種類がかぶっても良いということでした。熟考を重ねた結果、かぶったは出会いの追いキビタキ1種類のみ。ほかは、思いのほかバリエーションに富んだ選定となり、楽しめると思います。
 たとえば、オオコノハズクやササゴイは、秋の渡りのシーズンには、夜の録音に入っていることがあります。野鳥録音すれば、いるのがわかる鳥たちです。
 また、クイナの秋の鳴き声はあまり知られていませんので、鳴いても分からないかもしれません。以前、葛西でまわりにいたカメラマンはクイナの声を聞いても無反応でした。1人いたバードウォッチャーが「おや?」という顔をしていたので、クイナであることを教えてあげました。しばらくして、ヨシ原の隅から出てきたクイナを2人で見つけたことがあります。
 また、北本では探鳥会のリーダーにクイナの声が聞こえたので「クイナが鳴いている」とそっと教えてあげました。しかし、アリスイであるとゆずらないで困りました。
 こうした鳥たちの鳴き声が知られるようになれば、もっと出会いが楽しいと思っての執筆でした。Birder誌11月号、お目に触れる機会がありましたら、どうぞお買い求めいただければ幸いです。

« 2022年8月 | トップページ | 2022年10月 »