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2022年12月 1日 (木)

バードウォッチングに補聴器ーその2

 ここでは、リオンの箱形、義父のワイディックス社のセパレーツ型、日本野鳥の会からモニターで預かっていた一体型の3機種を使用して補聴器全体の使用感を述べます。下掲の写真は、ワイディックス社のセパレーツ型です。
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 私の耳の現状をまず話しておきます。10年前の人間ドックでは4,000Hz以上になると聞こえづらいことがわかっていましたが、今回の検査では2,000Hzあたりから落ち始め、4,000Hzあたりから急速に落ちていることがわかりました。思ったほど進行していませんでしたが、悪いことは悪いです。
 生活上での問題は、人との会話では大丈夫だと思っています。また、テレビの音も普通に聞こえます。聞こえないものは、体温計の警告音などが聞こえません。バードウォッチングでは、8,000Hzあるヤブサメのさえずりが聞こえないのはもとより、シジュウカラ、ヤマガラの高い鳴き方は聞こえません。アオジの地鳴き、コゲラの地鳴きが聞こえなくなるとは意外でした。
 ヒヨドリの声が違って聞こえることに気が付いたのも最近です。ようするに、ヒヨドリの鳴き声は2,500Hzから10,000Hzを超える高音域まで広がっています。このうち、高い音が聞こえなくなっているはずで、ヒヨドリ特有の甲高さを感じない音になっています。この他、ニイニイゼミが聞こえなくなりました。
 ということでここ数ヶ月。補聴器を付けては、六義園を歩いてみました。
 この夏、いちばん効果を感じたのはニイニイゼミの声です。六義園の夏の森は静けさを感じるほどでしたが、補聴器をつけると「ワーッ」という感じになるほど、セミの声にあふれていました。
何度も付けたりはずしたりしても同じ。はずすと「シーン」といy感じです。もし、補聴器の営業マンが耳の悪い人を連れて、このシーンを体験させたら、ぜったいに売れるに違いないと思うほど効果がわかります。
 同様に、秋になってヒヨドリの群れが六義園の森に集まるようになってからの体験です。補聴器を装着しなくてもヒヨドリの声は聞こえることは聞こえます。しかし、補聴器を通すとその数がいっきに増えます。もし調査をやっていたら、かなり少なく個体数をカウントしてしまうところです。
 ただ、ウグイスの笹鳴きが聞きづらいです。カミさんには聞こえて教えてもらうのですが、ちょっと遠い20m以上離れると聞こえません。ウグイスの笹鳴きも高めの音で、音域の広い鳴き声ですので、補聴器が苦戦している感じです。
 あと、まだ低い音の検証をしていません。たとえば、オオコノハズクの木魚鳴きは、聞こえる人と聞こえない人がいました。私は、鳴いていると教えてもらって耳を澄ますと聞こえました。この他、高い鳴き声は聞こえるのに遠いフクロウの鳴き声が聞こえなかった人もいました。オオコノハズクは100Hz。フクロウは500Hz前後、これらの音が補聴器でどれだけフォローできるのか、気になるところです。
 この他、補聴器を使用していて感じたことを書いておきます。
 義父が使うのをやめた理由のひとつは、小さくて操作しづらいことがありました。とにかくボタン電池が小さいです。5mmほどの小さな電池の出し入れに年寄りは苦労します。また、それに加えて、電池の保ちがよくありません。六義園では、せいぜい1日2,3時間の使用ですが、10日ほどで電池がなくなります。さらに、環境にやさしくないボタン電池を廃棄するのも心が痛みます。
 つぎが、うるさいがあったようです。家の中、散歩、あるいはマーケットなどの施設の中など、音の状態や響き具合が、皆違います。ボリュームを調整できないと、うるさいときはうるさいです。
 鳥の声がよく聞こえますが、鳥に興味のない人にとってはヒヨドリの群れの鳴き合う声は、うるさいと感じることでしょう。さらに自分の足音、上着の衣擦れ、双眼鏡の金具、オバさんのしゃべり声は、うるさいです。
 ハウリンクも嫌ったようです。耳にかけるタイプは、ハウリンクは少ないのですが、一体型のタイプはマイクとスピーカーが近いので、ハウリンクを起こします。ボリュームを上げるとハウリンクをする、下げると効果がなくなってしまいます。一体型では、この調整を耳に入れたままで行うのですから面倒です。
 5年たって、補聴器の機能が良くなっていると店員が教えてくれました。まず、電池式から充電式が増えたとのことで、電池交換のめんどくささからは解放されそうです。また、スマホからアプリでボリュームを調整することができる機種もあるそうです。今のワイヤレスイヤフォンの性能を見ると、補聴器ももっと機能が充実して使いやすくなっても良いと思いますが、遅れていると感じます。
 さらに価格も問題です。60万円で驚きましたが、これは安い方で100万円もあります。高齢者が増え需要が多くなり、ロットが増えて安く高性能になって良いはずなのになっていません。まるで、とり残されたガラパゴスの固有種のようです。
 私としては、スマホのボイスレコーダーとリンクさせ、録音できる補聴器が欲しいですね。
 高齢者のベテランのバードウォッチャーに珍鳥がいたので呼んだけど聞こえなかった。そのような人が高い声で鳴くムシクイ類、低い声のフクロウ類の報告しているが大丈夫だろうか。と心配する話を聞いたことがあります。名前の通ったベテランだけに記録が一人歩きしてしまう可能性もあり、怖い話です。
 こう言う方が補聴器を付けたら愕然とすると思います。そのためにも、バードウォッチングでの補聴器の使用をはかるべきだと思っています。(おわり)

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コメント

松田さんの目的にかなうかどうか判りませんが、

オリーブユニオンという会社の製品に、
「オリーブスマートイヤープラス」
というのがあるようです。
ウェブで検索すると、商品情報が出てきます。

それから、ハウジングというのは、もしかして
ハウリングのことではありませんか。

ekai様
 オリーブユニオンのサイト、行ってみました。
 周波数ごとの微調整がどこまでできるか、ポイントですね。
 月額料金というのも、初心者には言いシステムかもしれません。
 ブログには書きませんでしたが、ほとんどの補聴器は防水性がないのです。顔を洗ったりフィールドで雨にあったり、せめて防滴機能はほしいところです。
 ハウリングのご指摘、ありがとうございます。かってに変換していたみたいです。訂正いたしました。

ごぶさたしております。
 補聴器のことを書いておられたので、関連する私のアイデアを紹介します。
実は、昨年9月~12月に補聴器、あるいはボイスレコーダのメーカーに「低音化機能」を具備した製品を出して欲しいと提案書を送っていました。殆どが、なしのつぶてか、返答があっても、外部からの提案は受付けておりません、というものです。
 3年ほど前に、叔母が遺したSiemensの補聴器(両耳で70万円!)を代理店で、私の聴力特性に合わせて調整して貰いました。この補聴器は、細かく周波数特性を設定できるものです。しかし、コロナ禍もあって、「鳥聴き」用にはあまり役立っていません。それに、耳かけタイプですので、ヘッドホンで鳥声CDなどを聞く際には使用できません。
 私の提案は、(実時間で)原音の高さを1/2とか、3/4に低音化する機能です。パソコン上では、この機能を実証しています。ボイスレコーダの場合は、低音化してモニタしながら、鳥や虫の鳴き声に注意し、原音はそのまま録音します。このアイデアをDonald Kroodsmaにメールしたら、「best! しかし、鳥声を re-learnしなければならないね」と返答してきました。
 現在の考えでは、ハードウェアの日本メーカは動きがにぶいので、スマホのアプリ(低音化してモニタしながら原音をPCM録音する機能)として実現するのが良いとおもっています。しかし、私にはもうその力がないので、アプリを開発する技術者を探そうかと思っています。
 ところで、「野鳥の会本部」で補聴器を取り扱うと神奈川支部長に聞きましたが、なにか情報をお持ちでしょうか。野鳥の会が出すなら、私のアイデアを組み込むと、大半の年配会員から喜ばれるように思いますが。いかがでしょう・・・

石井直樹様
補聴器のメーカーは、キヤノンやソニーなどに比べれば、小さなメーカーのわりに小回りがきかないのですね。
 ブログの記事は使う者の立場で書いていますが、売る者の立場を今回、多少なりとも知りました。まず、資格がいるそうです。どのように習得するかまで知りませんが、ないと売ることができません。また、私が1時間かけて検査したように、検査する能力と資格を持った人員、検査するための防音室、検査機器が必要となります。現在のバードショップには、それだけの人員とスペースがあるとは思えません。また、このような投資をすれば、10万円を超える機器となり、現在日本野鳥の会が扱っている価格帯を考えると売れるかどうかを考えてしまいます。将来的には、必要だと思いますし、売れるようになるかもしれません。現実的にするためには、いろいろ壁を越えないとならないと思います。。
 なお、野鳥の会本部はありません。今は、本部と支部という関係ではなく、公益財団法人日本野鳥の会と各地の連携団体という関係です。ですので、事務局を連携団体事務局と区別する場合は、財団事務局と言っています。

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