1960年代のAudubon Magazine-アメリカの録音事情
元日本野鳥の会職員の飯塚利一さんから、1960年代のAudubon Magazineに録音の記事が載っているけど、いるかのお申し出。二つ返事で、いただくことになりました。さっそく送ってきていただきました。
1965年1/2月号、1965年5/6号の2冊です。Audubon Magazineは、アメリカの野鳥の会とも言える全米オーヂュボン協会の機関誌です。私は1960年当時、名前はおろか存在も知りませんでした。
なんでも、初期バージョンの『山野の鳥』(1972)と『水辺の鳥』(1976)のイラストを描いた松井虎二郎さんの遺品整理を依頼され、その1部だそうです。Audubon Magazineは200冊あったといいますから、隔月刊の雑誌ですから戦後30年分くらいのバックナンバーでしょう。
初心者だった私にとっては、松井さんは怖い東京支部の幹事というイメージが残っています。しかし、当時としては入手するのも難しい上に1ドル=400円の時代に高価な雑誌を手に入れて勉強されていたことになります。
さて、1965年1/2月号の記事は、”Ambassador of Birdlife”というタイトルで、アレン博士とケロッグ博士の録音風景の写真が載っています。写真のキャプションには「世界でナンバーワンの野鳥録音のチーム」となっています。
写真には、大きなパラボラの集音器が写っています。いかにも手作りのような仕様です。蒲谷先生のものよりでかいです。また、録音機はオープンリールで、私は見たことのないタイプです。ソニーのデンスケと呼ばれたEM-2やEM-3は1970年代に入ってからの発売です。それ以前の1965年以前にアメリカではポータブルタイプの録音機が普及していたことになります。
1965年5/6号は、"BIRD SONG:the Anatomy of a Miracle"いわば、「鳥のさえずり-奇跡の解剖学」といったところでしょうか。5ページにわたる記事です。なんと、声紋分析ができるようになったという内容です。
録音風景は、手持ちができるパラボラ集音器と肩から下げているオープンリールタイプの録音機で録音しています。声紋分析はまるでSF映画に出てくるような械が並んでいます。声紋は、くるくる廻るドラムに巻いた紙に針が描き出すもので、ドラム一周ですから,数秒間しか分析できないはずです。それでも、目に見えない音を視覚化できることは画期的なことでした。
日本では蒲谷先生がオシロスコープにカメラをあてて長時間露光をすることで、鳴き声を形にしようと苦労されていた頃です。
次のページには、いろいろな鳥の声紋が掲載されています。
科学の発展により新たな時代を迎えた感のある記事です。
こうした、野鳥録音の歴史は、意外と情報がなく、昔のことを知ることは難しいものがあります。今回、飯塚さんのおかげで、アメリカの1960年代のようすを得ることができました。
飯塚さん、ありがとうございます。
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