フォノシート『信州の野鳥』
ネットオークションで『信州の野鳥』というタイトルのフォノシートを落札しました。わずか100円。送料の方が高いことになります。
若い人にまず説明しておきます。フォノシートは、レコードの簡便なものといったところです。薄いビニールにレコードのように溝がほってあって、レコードプレイヤーにかけると音がでます。定直、音はよくありませんが、高額なレコードに比較して、無料配布できるほど安価でした。
たいたい1960年後半から1980年代にかけて普及し、カセットテープが出現しことで衰退しました。1991年に生産終了となっています。
『信州の野鳥』で検索するとレコード買い取り業者のサイトがヒットして、きれいなライチョウの写真のジャケットがアップされてていました。私が入手したものはフォノシートだけ、裸でしたのでジャケットがあるようです。
入手したフォノシートには長野県観光連盟と「星野嘉助 小平万栄」の名前がありました。星野さんも小平さんも野鳥業界の大先輩ですし、若い頃にお会いしています。星野さんは、星野リゾートの現社長の祖父にあたります。中軽井沢の星野温泉の社長で、戦前戦後と日本野鳥の会を支えてくれた恩人のお一人です。
小平さんは、長野県塩領というところで小鳥バスを長い間続けていました。小鳥バスとは、野鳥のいる所へバスで観光客を案内し、小平さんが野鳥の解説をしてくれるものです。いわば、バードウォッチングツアーの先駆けともいえる事業でした。
小平さんは「わしは、300人を前にしても声が通る」と豪語していました。なんでも、元教師だからできるとのこと。そんな大声をだしたら野鳥がいなくなってしまうのはないか心配してしまいます。当時は、各地にこうした名物オジさんがいたものです。
前おきは、これくらいにして肝心の野鳥の声です。
星野さんは、日本最初のレコード「野鳥の声」でオオハクチョウの声を提供していますので、録音をしていたことは間違いありません。しかし、当時としてはあまりにもクリアな録音にあの嘉助さんがと、ちょっと疑ってしまいました。
ちょうど、O村さんが嘉助さんの録音風景の写真を見つけ出してくれました。自転車に大きな自家製のパラボラを乗せて,おそらく中軽井沢の別荘地を歩く写真です。この装備ならば、きっとよい音が録れたはずと安心いたしました。 小平さんが録音をしていたとは知りませんでした。もしかするとナレーションのシナリオを書いたのかもしれません。解説は」野鳥を野外で見たことが無ければ書けない表現があります。小平さんは、シナリオ担当だったかもしれません。
ただ,オープニングとエンディングの音声は、ちょっといただけません、野鳥の朝のコーラスにヨタカの声をミキシングしたように聞こえます。昼間のカッコウと夜のヨタカがいっしょに鳴くことがあるでしょうか。野鳥の多かった昔は、こういうことがあったのでしょうか。今聞くと違和感を覚える音源です。
よりにぎやかにしたかったのでしょうか。コーラスだけで十分、にぎやかなのですが、屋上階を重ねてしまった感じです。
『信州の野鳥』は、おそらく1960年後半から1970年にかけて、発行されたフォノシートだと思います。当時。野鳥の音声は蒲谷さんかNHKの音源しか、発表されていません。しかし、こうして録音された音源があることを知りました。それも、かなりきれいな録音です。星野さんには、もっとがんばって欲しかったと思いますし、これらの音源は星野家に残っているのでしょうか。
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