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2023年3月30日 (木)

コマドリとタネコマドリの微妙な関係ーその1

 アカヒゲの研究家、森林総合研究所の関伸一さんから、BOUに「Genetic structure of the Japanese Robin Larvivora akahige endemic to East Asian islands.」というタイトルで論文を発表しましたので、乞ご高覧というご連絡をいただきました。
論文本文は、会員でないと読めませんが、紹介ブログが読めますので、そちらをご覧いただければと思います。

https://bou.org.uk/blog-seki-east-asian-robins/

 関さんは、Birder誌にもアカヒゲの研究について連載していましたので、ご存知の方も多いことと思います。
 アカヒゲは、南西諸島を通るコマドリのうち、氷河期のあい間に海面が上昇し(て陸地が分断され渡るのを止めたものが定着してアカヒゲとなり、沖縄本島とそれより北の島々で、亜種ホントウアカヒゲと亜種アカヒゲに分かれ、さらに石垣島にいると言われていた亜種ウスアカヒゲは、北の亜種アカヒゲが渡って来たもので、亜種は存在しないということをDNAから証明しました、日本鳥学会的には、かなりセンセーショナルな発表で、私も感銘を受けて、ガラにもなく関さんを捕まえて質問してしまいました。
 関さんは野人という感じの方で近寄りがたく、やっと一つ質問をすることができました。その後、お付き合いをすると最初の印象とは違って、とても気さくに教えていただいております。
 たとえば、無人島に1年間、録音機を置いての超長時間録音をしていることを教えてくれました。結果、鳥の新しい繁殖地を見つけるなど成果を上げています。私も真似をしておそるおそる1晩録音、1週間録音をしてみました。仲間には、1ヶ月や3ヶ月録音をするなど、長時間録音をすることの面白さを普及させるきっかけとなりました・
 というご縁で、10年前に日光のコマドリの生息地をご案内した成果の論文発表となりました。
 いろいろ思い出ありますが、日光を発つのをお見送りしようと、駅前のレンタカー屋で待っていると泥だらけの車が走ってくるので「汚い車が来るなあ」と思ったら関さんでした。車が、野人様御用達になっていました。
 ということで、タネコマドリの話です。
 タネコマドリの名前のタネは、種子島の種です。漢字では種子駒鳥と書きます。亜種発見の個体が捕獲されたのが、鹿児島県の種子島だったからです。しかしその後、種子島には生息していないことがわかり、生息地は伊豆諸島と確認されました。
 タネコマドリは、姿形が似ていても生態がコマドリとは大きく違っています。まず、コマドリは栃木県日光であれば標高1,600~2.000mに広がる亜高山隊の森林です。しかし、タネコマドリは海岸近くでも生息していて、平地の鳥です。また、コマドリが夏鳥なのに対して、タネコマドリは留鳥で冬もいます。
 なぜ、渡りをしないタネコマドリが種子島で捕獲されたのか、かなり前の日本鳥学会で、この捕獲された標本のDNAを調べたらコマドリのようだという発表があったと記憶しています。
 ということは、たまたま種子島で捕獲されたコマドリが、胸の黒い帯の色が淡いため新亜種として発表。その後、その特徴と一致する個体群が伊豆諸島で見つかったという流れで良いでしょう、戦前の新亜種発見競争と剥製主義の時代の間違いといえます。(つづく)

 

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