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2024年8月

2024年8月28日 (水)

8月の尾瀬ヶ原

 山の鳥たちの囀りもそろそろ終盤です。8月になっても囀っている鳥はいないかなと思いを巡らせたとき、以前8月に尾瀬へ行った時炎天下の尾瀬ヶ原でホオアカが盛大に囀っていたのを思い出しました。今年もまだ鳴いているかなと思って真夏の尾瀬を訪れました。

 

8月の尾瀬ヶ原の早朝です。

アオジ、イカル、ウグイス、そして、いました、いました、ホオアカが鳴いています。途中で聞こえる鉄砲のような三連発はミズバショウの実を食べに来るクマを山へ追い返す為の打ち上げ花火の音です。最近尾瀬でもハイカーがクマに遭遇する場面が多発し今や打ち上げ花火が尾瀬の夏の風物詩?となりつつあるそうでそのまま録音に残しました。

ホオアカは声量も小さくノビタキのようなシャレた色彩も無いのでつい見過ごされがちな目立たない鳥です。録音の中でちょっとホオジロに似た様な感じで鳴いているのがホオアカです。

 

8月の尾瀬は巣立ち雛の幼稚園状態になっていました。人間を全く気にせず木道の上をペタペタよたよた歩いている何の雛だか分からない巣立ったばかりの幼鳥や、2羽3羽で木道の縁を出たり入ったり楽しく遊んでいるようなノビタキの幼鳥にハイカーの皆さんも足を止めて見入っていました。

 

前回も感じたことですが、ノビタキのオスは巣立ち雛を引き連れて草原を飛び回っていますが囀りは聞かれません。アオジやイカルは木のあるところで鳴いています。草原で囀っているのはホオアカだけです。子育ての時期、または雌雄の役割分担などに違いがあるのでしょうか?それともこれは尾瀬ヶ原に限ったことなのでしょうか?

 

最近のクマ事情から尾瀬でも木道のあちらこちらにクマベルが設置されるようになりました。見ていて気が付いたのですがほとんどの人がベルを鳴らしていきます。混み合っている昼の時間帯でも鳴らすのですからクマへの恐怖心や警戒感から鳴らしているとは思えません。人間って音を出すものがあると何でも鳴らしてしまうと言う特性があるのでしょうか?

 

2024年8月18日 (日)

六義園でヤマガラ繁殖

繁殖シーズンの終わりに書き留めておきたかったことがあります。

今年六義園でヤマガラが繁殖したのです。「初めて」と言いたかったのですが実は1991年にも繁殖していて今回が2回目です。主人は84~91年3月まで六義園でセンサスをしていましたが,終了後の5月に4羽の雛連れが見られました。ヤマガラは六義園では珍しい鳥で冬の間に何回か見られる程度でしたが、1990年は例外で10月以降翌年まで毎回センサス時に1~2羽が観察されていました。この個体が繁殖したと思われます。

その後30年以上ヤマガラの繁殖記録は無く今年の繁殖はほぼ初めてに匹敵するものだと思います。

興味深いのは井の頭公園で活動しているS木さんが22年のブログで「井の頭のヤマガラは冬にやってくる鳥」だったが今では繁殖していると書いていることです。ヤマガラが平地に進出しているのでしょうか。

 

恥ずかしながら私は今までヤマガラの雛を見たことがありませんでした。5月下旬、そろそろシジュウカラの雛が出る頃かな、などと思っていると偶然にもフカフカした幼鳥が直ぐそばの枝にとまりました。「あれ?おかしいな?」シジュウカラの雛には細いながらも親と同じ黒いネクタイがあるのですが、この幼鳥にはそれが無く、代わりに首の下にボンヤリとした横筋が見えるのです。急いで図鑑を調べるとなんとヤマガラではないですか。「普段からちゃんと図鑑を見てないとダメなんだよ」と主人の声が聞こえそうです。

雛は4羽で、六義園の中でも木がしっかり茂っている辺りにいるのは91年と同じでした。

ヤマガラは去年も囀っていて「珍しいね」と話していました。シジュウカラの雛もヤマガラの雛も色彩的には同じような色なので,シジュウカラと思い込んでヤマガラの雛を見落としたかとも思いましたが、去年の繁殖は無かったようでした。

ちなみにこちらはシジュウカラの雛の声です。

え? どっちも同じように聞こえるって?

2024年8月 7日 (水)

オオセッカのお話

  オオセッカは東北地方と関東地方のごく一部でしか棲息が確認されていない今だもって謎の多い鳥です。

霞ヶ浦から利根川流域の鳥を長年に渡って観察しているT本さんと一緒に利根川周辺の生息地を見て回りました。T本さん暑い中ありがとうございました。

 

 7月も下旬に入って山の鳥たちの囀りもそろそろ聞かれなくなる時期ですが、オオセッカは夏の日射しの中元気に囀っていました。セッカも賑やかに鳴いていてセッカとオオセッカの鳴き合いのようでした。T本さんの話では8月頃までこうして囀っていると言うことです。

バックで時々聞こえるホオジロのような声はコジュリンです。

元気な囀りを聞いているうちに笹川で初めてオオセッカを見たときのことを思い出しました。

 

オオセッカは昔から棲息、繁殖の確認数が非常に少なく長い間[幻の鳥」とされていました。一時は絶滅かと思われましたが、1970年代になって青森や秋田などで細々ながら繁殖が確認されるようになりました。

80年代に入っていつ頃からか「オオセッカが利根川辺りにもいるらしい」と言う噂が流れ始めました。当時はインターネットもSNSも無く携帯電話も無かったのでそのような情報は、研究者など一部の人はともかく一般のバードウォッチャーの間では口コミで広がって行ったのです。「笹川に行けば見られるらしい」と主人が聞いて来たので二人で笹川へ出かけました。一応居る場所の情報は仕入れていったのですが、何しろ一面のアシ原です。

いわゆる囀り飛翔をするので飛んだ時に声で聞き分けるしか無い、と言うことになりましたが、問題は声のデータが無いことでした。当時鳥の声を録音していたのは、日本では恐らく蒲谷鶴彦さんお一人で、一般のバードウォッチャーに鳥の声を録音するという発想は無く、もちろん主人もまだ録音はしていませんでした。どんな声なのか教えてもらったのですが皆言うことが違うのでどれが実物に近いのか分かりませんでした。今でも鳥の鳴き声を言葉で表現するのはたいへん難しいことを考えれば解っていただけるかと思います。

結局「セッカのように飛ぶ、セッカとは違う声の、セッカと似た鳥」と言うことで、今のように高性能の望遠レンズもありませんでしたので、笹川の大アシ原を飛び回る小さな鳥をよく特定出来たと思います。私はあれが本当にオオセッカかやや心許ない気もしたのですが、主人は大満足で帰って来ました。

その後何度か笹川を訪れてオオセッカの声も解り、またセッカとオオセッカは声だけでなく、囀り飛翔の仕方も違うと言うことも解ってあれはやっぱりオオセッカで間違いなかったと思っています。

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