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2024年8月 7日 (水)

オオセッカのお話

  オオセッカは東北地方と関東地方のごく一部でしか棲息が確認されていない今だもって謎の多い鳥です。

霞ヶ浦から利根川流域の鳥を長年に渡って観察しているT本さんと一緒に利根川周辺の生息地を見て回りました。T本さん暑い中ありがとうございました。

 

 7月も下旬に入って山の鳥たちの囀りもそろそろ聞かれなくなる時期ですが、オオセッカは夏の日射しの中元気に囀っていました。セッカも賑やかに鳴いていてセッカとオオセッカの鳴き合いのようでした。T本さんの話では8月頃までこうして囀っていると言うことです。

バックで時々聞こえるホオジロのような声はコジュリンです。

元気な囀りを聞いているうちに笹川で初めてオオセッカを見たときのことを思い出しました。

 

オオセッカは昔から棲息、繁殖の確認数が非常に少なく長い間[幻の鳥」とされていました。一時は絶滅かと思われましたが、1970年代になって青森や秋田などで細々ながら繁殖が確認されるようになりました。

80年代に入っていつ頃からか「オオセッカが利根川辺りにもいるらしい」と言う噂が流れ始めました。当時はインターネットもSNSも無く携帯電話も無かったのでそのような情報は、研究者など一部の人はともかく一般のバードウォッチャーの間では口コミで広がって行ったのです。「笹川に行けば見られるらしい」と主人が聞いて来たので二人で笹川へ出かけました。一応居る場所の情報は仕入れていったのですが、何しろ一面のアシ原です。

いわゆる囀り飛翔をするので飛んだ時に声で聞き分けるしか無い、と言うことになりましたが、問題は声のデータが無いことでした。当時鳥の声を録音していたのは、日本では恐らく蒲谷鶴彦さんお一人で、一般のバードウォッチャーに鳥の声を録音するという発想は無く、もちろん主人もまだ録音はしていませんでした。どんな声なのか教えてもらったのですが皆言うことが違うのでどれが実物に近いのか分かりませんでした。今でも鳥の鳴き声を言葉で表現するのはたいへん難しいことを考えれば解っていただけるかと思います。

結局「セッカのように飛ぶ、セッカとは違う声の、セッカと似た鳥」と言うことで、今のように高性能の望遠レンズもありませんでしたので、笹川の大アシ原を飛び回る小さな鳥をよく特定出来たと思います。私はあれが本当にオオセッカかやや心許ない気もしたのですが、主人は大満足で帰って来ました。

その後何度か笹川を訪れてオオセッカの声も解り、またセッカとオオセッカは声だけでなく、囀り飛翔の仕方も違うと言うことも解ってあれはやっぱりオオセッカで間違いなかったと思っています。

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コメント

オオセッカについて、長年の鳥仲間のM柳さんから、1973年に千葉県の上総一ノ宮で越冬個体を見つけたが誰も信じてくれず、最後に高野伸二さんに同定してもらった、と言うメールを頂きました。
利根川周辺ももともと東北で繁殖していた個体群の越冬地だったのですよね。

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