一番遅くまで囀っている鳥は?
鳥学会に顔を出してみました。たいへん盛況で若い人がたくさん来ていたのには驚きました。野外では鳥が激減しているのに研究者は増えているんだと思うとちょっと複雑な気持ちでした。
研究者の方達と「一番最後まで囀っている鳥は何だろう」という話になり、メボソ!で意見が一致しました。大御所のH先生が「9月になっても鳴いているよ」。
そこで久々に奥日光の白根山へ行ってみました。メボソムシクイは都会のバードウォッチャーの皆さんにはあまりなじみがない鳥ですが、山登りをする人にとっては極く普通の鳥です。関東では標高1700~2300mくらいの亜高山帯で繁殖しています。歩き出してしばらくすると、あ、いました!メボソが鳴いているではないですか。9月ももう24日だと言うのに。
1時間ほど歩く間に2ヶ所でメボソが鳴いていました。もちろん夏場より数はぐっと少ないですが、まだ鳴いてるんだ・・・・。他に囀っている鳥はいません。ルリビタキが2羽、カケスが鳴き、ウソの声もして、カラの混群もいくつか見られました。群の中心をなすのはコガラで、その他ヒガラとコゲラの姿が見えました。もう1種類いるような感じで10KHz近い非常な高音で、夏にたくさんいたキクイタダキかと思いましたが姿は見えませんでした。カラ類もかなり高い音を出すので何とも言えません。次回までの宿題です。
メボソ達はカラの群と行動を共にしているわけでは無く、梢のあたりで枝伝いに3羽が飛び回っていて、そのうちの1羽が良く鳴いていました。これも囀りなんでしょうか?
ところで今回の鳥学会ではメボソの鳴き方に関する興味深い発表を聴きました。メボソムシクイの声は図鑑では4音節で「ゼニトリ」と4音で記されています。「ゼニトリゼニトリゼニトリ」と鳴くのがメボソの特徴とどの図鑑にも書いてあり、私もそう思っていましたが、どうやら地域差があるようです。日光地域は4音節のエリアに入るのですが、3音節や5音節で鳴く地方もあり、分布域がしっかり分かれていると知りました。長野県を中心にメボソの声を調べているK田さんに貴重な音源をお借りしましたので聞いてみてください。
これは八ヶ岳山麓の麦草峠のもの。3音節で鳴いています。オオムシクイに似ていますがメボソムシクイです。
こちらは乗鞍高原で、なんと5音節です。メボソも奥が深いです。注意して聞いてみてくださいね。
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メボソの情報ありがとうございます。
麦草峠の録音は何も解説が無かったら完全にオオムシクイだと認定する鳴き方ですね。
驚きました!
井の頭公園では春の渡り時期に毎年メボソが通過していましたが、近年はメボソが記録されない年が続いていて、反面、オオムシクイの記録が増えてきています。
これらは「ゼニトリ、ゼニトリ」なのか「ジジロ ジジロ」なのか?で判断していましたが、メボソでも「ジジロ」タイプがいるとなると確証はなくなりますねぇ。
メボソとオオムシクイの中間的な鳴き方で悩ましいときもありますし、メボソは難しいですね。
投稿: S木♂ | 2024年9月30日 (月) 08時08分
♂木さん
そーなんですよね。メボソって難しいですね。最近は春にオオムシクイが増えている感触がありますが、鳴き声で判断できないと私なんかお手上げです。
ただK田さんにお聞きしたところ春にジジロと鳴いているのはほぼオオムシクイであろうと言うことです。一番いいのは録音して声紋を見る事だそうですが、得てして録音機を持ってない時に出くわすんですよね。
メボソは渡りのルートもまだ調べられていないし、また渡りのメボソがどこで繁殖した個体なのかも判っていないと言うことで、観察例も少ないので推測の域を出ないそうです。
投稿: 松田蘭子 | 2024年9月30日 (月) 20時40分
蘭子様
蛇足の話題ですが、オオムシクイがまだコムシクイだったころ、その鳴き声は「3拍子で鳴く」と説明されていました。
ところが3拍子というのは1小節に3拍あるという意味なので、私は鳴き声を想像できず、よくわかりませんでした。
実際に「ジジロ ジジロ」という鳴き声を聞いて「あぁこれは3拍子ではなく、3連符だ!」とわかりました。「タカタ タカタ タカタ」と1拍に3つの音があるのは3連が正解ですので、私は3連と説明しています(笑)。
投稿: S木♂ | 2024年10月 2日 (水) 14時02分
♂木さん
確かにその通りです。私もメボソな鳴き声について、3音節4音節と説明された時、最初ゼニトリゼニトリゼニトリと3回鳴くのが3音節と理解しました。そうすると日光にもそのようなメボソは沢山いるので、喜んで報告したら違うと言われました。
オオムシクイの声は正しくは1音節が3音なのではないかな?
投稿: 松田蘭子 | 2024年10月 3日 (木) 20時11分
「一番遅くまで囀っている鳥は?」を大変興味深く拝読しました。コロナの期間、近所の雑木林で10月から4月くらいまで私は夕方から日没前後の鳥の観察記録をしていたのですが、ウグイス、ガビチョウ、シロハラの3種は結構遅くまで鳴いていたのは大変興味深かったです。でも「最後のひと鳴き」がいつなのかは、ずーっと気をつけていないとわからないので、根気のいる作業でした。
12/01の偲ぶ会、とても楽しい貴重な時間をいただけて、本当に幸せでした。ありがとうございました。
投稿: 神戸宇孝 | 2024年12月 1日 (日) 17時24分
神戸さん
コメントありがとうございます。
確かに皆さん「初認」はよく記録されますが「終認」はあまりないですね。私の記憶でもガビチョウとウグイスは遅くまで鳴いていますね。特にガビチョウは春まで切れ目が無いのでは?と思うことがあります(シロハラはうちの方では囀らないので分りませんが)。鳴いていない事を確認するのは結構大変なことだと思います。鳥の生態もよく観察されているのですね。
投稿: 松田蘭子 | 2024年12月 2日 (月) 20時52分