書籍・雑誌

2023年2月 9日 (木)

フォノシート『信州の野鳥』

 ネットオークションで『信州の野鳥』というタイトルのフォノシートを落札しました。わずか100円。送料の方が高いことになります。

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 若い人にまず説明しておきます。フォノシートは、レコードの簡便なものといったところです。薄いビニールにレコードのように溝がほってあって、レコードプレイヤーにかけると音がでます。定直、音はよくありませんが、高額なレコードに比較して、無料配布できるほど安価でした。
 たいたい1960年後半から1980年代にかけて普及し、カセットテープが出現しことで衰退しました。1991年に生産終了となっています。
 『信州の野鳥』で検索するとレコード買い取り業者のサイトがヒットして、きれいなライチョウの写真のジャケットがアップされてていました。私が入手したものはフォノシートだけ、裸でしたのでジャケットがあるようです。
 入手したフォノシートには長野県観光連盟と「星野嘉助 小平万栄」の名前がありました。星野さんも小平さんも野鳥業界の大先輩ですし、若い頃にお会いしています。星野さんは、星野リゾートの現社長の祖父にあたります。中軽井沢の星野温泉の社長で、戦前戦後と日本野鳥の会を支えてくれた恩人のお一人です。
 小平さんは、長野県塩領というところで小鳥バスを長い間続けていました。小鳥バスとは、野鳥のいる所へバスで観光客を案内し、小平さんが野鳥の解説をしてくれるものです。いわば、バードウォッチングツアーの先駆けともいえる事業でした。
 小平さんは「わしは、300人を前にしても声が通る」と豪語していました。なんでも、元教師だからできるとのこと。そんな大声をだしたら野鳥がいなくなってしまうのはないか心配してしまいます。当時は、各地にこうした名物オジさんがいたものです。
 前おきは、これくらいにして肝心の野鳥の声です。
 星野さんは、日本最初のレコード「野鳥の声」でオオハクチョウの声を提供していますので、録音をしていたことは間違いありません。しかし、当時としてはあまりにもクリアな録音にあの嘉助さんがと、ちょっと疑ってしまいました。
 ちょうど、O村さんが嘉助さんの録音風景の写真を見つけ出してくれました。自転車に大きな自家製のパラボラを乗せて,おそらく中軽井沢の別荘地を歩く写真です。この装備ならば、きっとよい音が録れたはずと安心いたしました。 小平さんが録音をしていたとは知りませんでした。もしかするとナレーションのシナリオを書いたのかもしれません。解説は」野鳥を野外で見たことが無ければ書けない表現があります。小平さんは、シナリオ担当だったかもしれません。
 ただ,オープニングとエンディングの音声は、ちょっといただけません、野鳥の朝のコーラスにヨタカの声をミキシングしたように聞こえます。昼間のカッコウと夜のヨタカがいっしょに鳴くことがあるでしょうか。野鳥の多かった昔は、こういうことがあったのでしょうか。今聞くと違和感を覚える音源です。
 よりにぎやかにしたかったのでしょうか。コーラスだけで十分、にぎやかなのですが、屋上階を重ねてしまった感じです。
 『信州の野鳥』は、おそらく1960年後半から1970年にかけて、発行されたフォノシートだと思います。当時。野鳥の音声は蒲谷さんかNHKの音源しか、発表されていません。しかし、こうして録音された音源があることを知りました。それも、かなりきれいな録音です。星野さんには、もっとがんばって欲しかったと思いますし、これらの音源は星野家に残っているのでしょうか。

2023年1月24日 (火)

『鳥屋の本読み』卒業

 日本野鳥の会の「野鳥」誌に連載している『鳥屋の本読み』の担当を卒業することにいたしました。
 抗がん剤の副作用と思われる視力の低下で、本を読むことがとてもつらくなったためです。編集担当のS井さんに申し出て、了解していただきました。
 この書評欄は以前、担当だったK島さんが企画したもので、本好きの私に白羽の矢が当たりました。今、過去の原稿をチェックすると連載は2014年開始ですから8年続いたことになります。何冊取り上げたか数えるのも面倒ですので、字数では46,139字、1編600字+タイトル50字=650字として、8年間で70冊を取り上げたことになります。後半、「野鳥」誌が隔月刊になりましたので、計算は合うと思います。選定のために、取り上げた本以外も目を通していますので、倍以上の本を読んだ思います。これに文庫本のミステリーなども週1冊は読んでいましたから、目が悪くなるのも無理はありません。
 私は、アマゾンなどのレビューのひどさに辟易しています。上から目線で思い込みや独断と偏見、断定的な物言いは、筆者の心を傷つけることを目的にしているとしか思えません。それ以前に、レビューを書いている人に、読解力とその本を評価するだけの知識があるのか疑問です。
 引き受けるにあたって、K島さんとは取り決めをしました。まず、取り上げる以上、褒める。褒めるに価しないタイトルは、そもそも取り上げないとことにしました。
 博物館の学芸員の方が私が中学生向きに書いた『鳥はなぜ鳴くのか』(2019)を取り上げてくれたのはありがたいのですが「ものたりない」という評価でした。中学生向きに書いたのですから専門家が読めばものたりなのは当たり前、中学生が読んだらどう受け止めるかを評価して欲しいところです。こうした齟齬がおきないように、担当のS井さんも私と平行して読み間違いのようにしてもらっていました。「野鳥」誌のなかでたった600字のコーナーですが、かなり手間をかけて制作していることになります
 私自身の戒めとしては、取り上げる本は自腹で買う。寄贈された本は、もう1冊買って読む(予部は事務局に寄贈)。お金を出さないと、読み込み方が違うと思います。
 できたら、複数から選定する心づもりでしたが、出版不況のなかで不作の月もあって苦労しました。また、豊作でどれを選んで良いか選ぶのに苦労をする楽しい悩みもありました。
 あと、申しわけございませんが、写真集と図鑑は出版点数が多く取り上げるのは、地方出版のみといたしました。
 著者とは本の内容だけで面識のない方の本は、客観的に読め、紹介できます、しかし、業界が長いだけに友人知人の本も多く、顔を知っているだけに書きづらいものがありました。さらに、先輩諸氏の本は私が評価するのは僭越なこと。ただ輝くような魅力的な内容の本は、失礼を承知で取り上げました。かなり緊張して書いているたのです。
 ただ地味なコーナーですので、この連載を知らな人もいました。しかし、取り上げることで、日本野鳥の会に認められたことになり、筆者の励みになってくれればと思いました。出版不況のなか、出版社も同じように思い、次の企画も野鳥でとなればしめたものです。
 小学生時代、読書感想文の宿題で、とても苦労した苦い思い出があります。それを思うと仕事とはいえ「鳥屋の本読み」は、楽しく書かせていただき、担当のK島さん、S井さんには感謝です。また長い間、お読みいただいた会員、読者の皆さまにお礼申し上げます。

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 なお、次回はこのコーナーはお休み。次々回より、蒲谷剛彦さんが担当して再開されますので.お楽しみに。

2022年12月30日 (金)

1960年代のAudubon Magazine-アメリカの録音事情

 元日本野鳥の会職員の飯塚利一さんから、1960年代のAudubon Magazineに録音の記事が載っているけど、いるかのお申し出。二つ返事で、いただくことになりました。さっそく送ってきていただきました。
 1965年1/2月号、1965年5/6号の2冊です。Audubon Magazineは、アメリカの野鳥の会とも言える全米オーヂュボン協会の機関誌です。私は1960年当時、名前はおろか存在も知りませんでした。
 なんでも、初期バージョンの『山野の鳥』(1972)と『水辺の鳥』(1976)のイラストを描いた松井虎二郎さんの遺品整理を依頼され、その1部だそうです。Audubon Magazineは200冊あったといいますから、隔月刊の雑誌ですから戦後30年分くらいのバックナンバーでしょう。
 初心者だった私にとっては、松井さんは怖い東京支部の幹事というイメージが残っています。しかし、当時としては入手するのも難しい上に1ドル=400円の時代に高価な雑誌を手に入れて勉強されていたことになります。
 さて、1965年1/2月号の記事は、”Ambassador of Birdlife”というタイトルで、アレン博士とケロッグ博士の録音風景の写真が載っています。写真のキャプションには「世界でナンバーワンの野鳥録音のチーム」となっています。
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 写真には、大きなパラボラの集音器が写っています。いかにも手作りのような仕様です。蒲谷先生のものよりでかいです。また、録音機はオープンリールで、私は見たことのないタイプです。ソニーのデンスケと呼ばれたEM-2やEM-3は1970年代に入ってからの発売です。それ以前の1965年以前にアメリカではポータブルタイプの録音機が普及していたことになります。
 1965年5/6号は、"BIRD SONG:the Anatomy of a Miracle"いわば、「鳥のさえずり-奇跡の解剖学」といったところでしょうか。5ページにわたる記事です。なんと、声紋分析ができるようになったという内容です。
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 録音風景は、手持ちができるパラボラ集音器と肩から下げているオープンリールタイプの録音機で録音しています。声紋分析はまるでSF映画に出てくるような械が並んでいます。声紋は、くるくる廻るドラムに巻いた紙に針が描き出すもので、ドラム一周ですから,数秒間しか分析できないはずです。それでも、目に見えない音を視覚化できることは画期的なことでした。
 日本では蒲谷先生がオシロスコープにカメラをあてて長時間露光をすることで、鳴き声を形にしようと苦労されていた頃です。
次のページには、いろいろな鳥の声紋が掲載されています。
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 科学の発展により新たな時代を迎えた感のある記事です。
 こうした、野鳥録音の歴史は、意外と情報がなく、昔のことを知ることは難しいものがあります。今回、飯塚さんのおかげで、アメリカの1960年代のようすを得ることができました。
 飯塚さん、ありがとうございます。

2022年12月 4日 (日)

小林重三の『狩猟鳥類掛図』

 少しずつ身辺の整理をしています。断捨離、終活、生前形見分けと言ったら良いでしょうか。また、毎日家にいることが多くなって、モノに埋もれているのもストレスです。すでに段ボール箱換算で10箱分は処分したと思うですが、減った感じがしないのも困ったモノです。
 今回、山階鳥類研究所に小林重三の原画2点などを寄贈しました。以前、ブログの記事にしたイワシャコとケリの絵です。そういえば、掛図もあったはずなので、いっしょに寄贈しようと探しました。
 クロゼットの奥にあるのを見つけ出しました。
 掛図のタイトルは『狩猟鳥類掛図』で「其の1」から「其の5」まであります。当時の分類からみて、種類が網羅されていますので、この5巻で揃いだと思います。
 ここでは、著作権の関係ですべてをアップできませんので「其の1」のみ引用ということで、アップいたします。

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 農商務省農務局の名前があり日本鳥学会発行となっています。両方に関わっていた内田清之助さんの仕事でしょう。
 発行は大正13(1924)年の記録がありますが、手元にある「改訂狩猟忠類掛図解説」のリーフレットは、農林省山林局編、日本鳥学会発行とあり、昭和12(1937)年発行となっています。ということは、少なくとも、こうした掛図が改訂も行われ10数年にわたって、使用されていたことになります。
 私の小学生の昭和30年代は、まだ授業で掛図が使われていました。内容はまったくおぼえていませんが、黒板の上にかけられ、先生が指し棒で解説した様子を覚えています。少し前ならばビデオ、今ならPadの役割を掛図がしていたことになります。
 この掛図は、大正7(1918)に行われた狩猟法の改訂にともなって作られたものと推測されます、それまで保護鳥獣を指定する制度から、すべてを保護鳥獣として、その中から狩猟鳥獣を指定して捕獲が可能な方式となりました。指定された狩猟鳥をハンターに教えなくてならず、そのための掛図だったと思います。
 狩猟のための講習会は度道府県ごとにおこなわれたはずで、せいせい掛図は50セット。仮に予備も含めて倍としても、100にしかなりません。現場では消耗品あつかいだったかもしれませんし、改訂されたら破棄されたはずです。現存するものは、わずかだと想像できます。
 小林の絵を見ると。とてもていねいに描かれていることがわかります。また、1図こと構図も決まっていて、大きさの異なるでありながら、鳥と鳥の間隔やスペースが均一に感じるよう配置されています。これは、とても面倒なデザインをしていることになります。また。構図に合わせて鳥のポーズにも変化をつけています、小鳥など皆同じ方向を向いても文句はでないと思いますが。バラつきが絶妙です。力を入れた良い仕事をしている感じです。このまま、床の間に飾っても絵になる掛図となっています。
 なお、タバコのヤニでしょうか、かなり黄ばんでいます。昔の講習会ですから、タバコの煙が渦巻くなかで行われていたのでしょう。また、軸装の木製の軸が破損しているものもありました。
 寄贈してわかったのですが、山階鳥類研究所のT見さんの話では、ニスが表面に塗られているようだとのこと。軸装も本来ないかもしれないとのことでした。ですので、かなり大切に使用されたのかもしれず、そのため残った可能性もあります。
 驚くのは当時の狩猟鳥です。なんと、アホウドリも狩猟鳥だったことがわかります。最初、この掛図に描かれた鳥たちは、狩猟鳥との区別のために保護鳥も取り上げられていているだと思っていました。アホウドリのみならず、クマタカ、イヌワシもいるのですから、そう思っていたのですところが、すべて狩猟鳥です。ようするに、すべて保護鳥になったとはいえ、取りたい鳥や飼いたい鳥は狩猟鳥に指定されたことになります。当時の猟友会の力、行政の姿勢を垣間見ることができます。
 当時の狩猟鳥獣のリストは当然わかるのですが、こうして絵を見ると鳥たちの暗黒時代を実感します。小林重三の絵だからこそ、なおさおさら実態が伝わってくる感じです。

追記:他の本を探していたら、掛図の解説書が出てきました。かなりぼろぼろになっていました。『狩猟鳥類掛図解説』のタイトルです。A5版57ページのパンフレットという装丁です。奥付を見ると、大正13年3月28日印刷、29日発行となっています。年度末、ぎりぎりの事業だったのでしょうか。他の資料にあった発行年で合っていたことになります。
 あとがきやまえがきなどはなく鳥の解説のみで、いたってそっけない内容です。小林重三の名前もみつけることはできませんでした。
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2022年11月 7日 (月)

柳沼俊之さんの野鳥カレンダー2023-ご案内

 ご近所のプロ野鳥カメラマンの柳沼俊之さんから来年の「野鳥カレンダー」をいただきました。例年のことながら、ありがとうございます。それにしても、もう来年のカレンダーを準備する季節になってしまったのですね。
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 今年も表紙は、みんな大好きのカワセミです。
 最初に開いた1月は、ブームのシマエナガです。おかげで世の中にはシマエナガの写真に満ちあふれていますが、その中でももっとも可愛いシマエナガの写真ではないでしょうか。ある意味「ひきょう」な可愛さ。野生動物の生き様はきびしいものがあると思うのですが、こうした野鳥の可愛い写真で野鳥ファンが一人でも増えるのであれば受け入れます。どんどん発表してください。
 ということで、2月からもメジロ、シジュウカラ、コゲラ、オオルリ、キビタキ、コサギ、カワラヒワ、キクイタダキ、カワセミ、スズメ、エゾフクロウと続きます。いずれも、風景や華と野鳥のコラボレーションは見事です。
 柳沼さんは、今年は春に北海道で取材を2ヶ月続けたとか。その成果があったようです。
 来年も一年間、野鳥とともにある生活が送れそうです。
 定価は、1,320円。書店やアマゾンで入手可能です。アマゾンのURLを上げておきます。現在、アマゾンで「野鳥カレンダー」を検索すると、トップにでてきます。
https://www.amazon.co.jp/2023%E9%87%8E%E9%B3%A5%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC-%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC-%E5%86%85%E5%B1%B1%E6%99%9F%E5%8B%95%E7%89%A9%E5%86%99%E7%9C%9F%E4%BA%8B%E5%8B%99%E6%89%80/dp/4845009145/ref=sr_1_3?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E9%87%8E%E9%B3%A5%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC&qid=1667809080&qu=eyJxc2MiOiIzLjg1IiwicXNhIjoiMy4yMCIsInFzcCI6IjIuNjQifQ%3D%3D&sr=8-3

2022年9月28日 (水)

まぼろしの図鑑刊行-ご案内

 「小林重三の絵が大量に見つかった!」と興奮した電話をもらったのはついこの間のような気がします。
 日本野鳥の会をリタイアした飯塚利一さんはのんびり鳥でも見ているのかと思ったら、蜂須賀正氏の別荘跡地をたずね、元使用人が所有していた重三の原画を探し当てるなど、まるで私立探偵のような活動をしています。
 その飯塚さんの話では、中西悟堂家の所有する遺品のなかから、ごっそりと重三の絵が出てきたとのことでした。中西家では大事なものだからと言い伝えられていた遺品で、大切にするあまり奥の奥にしまわれていたようです。
 イラストを調べて見ると、戦前に企画されていた『野鳥ガイド』という図鑑のために描かれた原画であることがわかりました。このたび、戦前に描かれて、突如としてタイムスリップしたように発見された重三のイラストが現代に蘇り出版されました。
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 そもそも『野鳥ガイド 上巻陸鳥編』(1938年・日新書院)は、戦前に発行された数少ない図鑑で、それだけにかなり売れたようです。私の蔵書の奥付には初版発行が昭和13年、翌年の14年には4版を重ねています。
 ただ、図版は線画のため解説文をよく読まないと色はわかりません。イラストは平岩康熙。中西家の書生だったとのことですが、生没不明でよくわからない人物です。イラストの鳥の形は、とても良いのですが、いかんせん線画の荒さが目立ち、タッチに素人っぽさを感じさせるイラストです。悟堂さんの解説はていねいで、読み応えがあります。また、サンコウチョウは村落の鳥の項にいて、ヒヨドリやキジバトが森林の鳥になっているのは、鳥たちをめぐる世界の変化を知ることができます。
 ただ、売れたと言われているのになんで上巻陸鳥編で終わってしまい、下巻水鳥編が出版されなかったのか。長い間、疑問でした。今回のイラストの発見で、実はカラー化と水鳥 編の企画があったことがわかりました。戦中の動乱と戦後の物資不足のなかで、埋もれてしまったことになります。
 今では、私でさえ鳥の図鑑を手がけていますし、アマゾンで「野鳥図鑑」で検索すれば、ずらっとお歴々の手がけた野鳥図鑑が並びます。しかし。1960年代に日本鳥類保護連盟が『野外観察用鳥類図鑑』の企画を出版社に持ち込んだところ、鳥の図鑑など売れないと”けんもほろろ”だったと伝え聞いています。当時、連盟会員が3000人、日本野鳥の会の会員も同じくらいの時代ですから、出版社としても、乗れる企画ではなかったことになります。その時代のこと、悟堂さんの存命中には浮揚することのない幻の企画のままとなってしまったことになります。
 今回の発見と出版は、それを補うにあまる大事業となりました。
 詳しい内容については、アップしたチラシの画像をご覧ください。また。飯塚さんとお仲間の自費出版の形式となり、流通には乗っていません。画像の申込みハガキの内容を飯塚さん宛にお送りいただくと、本と請求書が送られてくる手はずになっています。それに従い、送料と代金を支払うことになります。
最後まで手間のかかることとなってしまいましたが、次世代に野鳥の世界の財産をつなぐために個人の力の強さを感じる事業でもあります。
 どうぞ、皆さまもお買い求めいただき、お力添えをいただければと思います。
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2022年9月17日 (土)

Birder誌11月号ー投稿のご案内

 退院しました。想定される副作用ですみました。今後は、通院しての治療が続きますので、まだ先は長そうです。
 さて、入院前に入稿し、入院中に校正依頼のあったBirder誌11月号が発行されました。私は、特集「探しに行こう秋の渡り鳥」のなかの「声で探す秋の鳥たち」4ページ分を担当しています。

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 実は、5月号の春の渡り鳥の特集のときに、秋があるとは思いもつかず、ネタを使いきってしまいました。編集部からは、種類がかぶっても良いということでした。熟考を重ねた結果、かぶったは出会いの追いキビタキ1種類のみ。ほかは、思いのほかバリエーションに富んだ選定となり、楽しめると思います。
 たとえば、オオコノハズクやササゴイは、秋の渡りのシーズンには、夜の録音に入っていることがあります。野鳥録音すれば、いるのがわかる鳥たちです。
 また、クイナの秋の鳴き声はあまり知られていませんので、鳴いても分からないかもしれません。以前、葛西でまわりにいたカメラマンはクイナの声を聞いても無反応でした。1人いたバードウォッチャーが「おや?」という顔をしていたので、クイナであることを教えてあげました。しばらくして、ヨシ原の隅から出てきたクイナを2人で見つけたことがあります。
 また、北本では探鳥会のリーダーにクイナの声が聞こえたので「クイナが鳴いている」とそっと教えてあげました。しかし、アリスイであるとゆずらないで困りました。
 こうした鳥たちの鳴き声が知られるようになれば、もっと出会いが楽しいと思っての執筆でした。Birder誌11月号、お目に触れる機会がありましたら、どうぞお買い求めいただければ幸いです。

2022年6月15日 (水)

『雁の道をたずねて』-ご案内

 ヒヨ吉さんこと神戸宇孝さんより『雁の道をたずねて』をいただきましたので、ご紹介いたします。

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 ガンの仲間のカリガネを巡っての絵本です。
 かつては、たくさんいたカリガネですが、一時はマガンの群れのなかから1羽を見つけられたらラッキーというほどの珍鳥でした。私自身、出会いは数えるほどで、たぶん合計しても数羽のカリガネにしか会っていません。
 現在では、かなりの群れで見られるようになりました。このカリガネをめぐっての経緯から復活のきかっけとなった調査など、やさしく解説されています。
 もちろん、絵は神戸さんです。カリガネのいる風景がとても生き生きと描かれています。この他、文章は池内俊雄さん、構成は澤祐介さんです。発行は雁の里親友の会です。
 この本は助成金を受けて作成したため、一般には流通しません。こうした本を紹介するのは憚れます。しかし、ネットで検索してもタイトルが出てこないのは、この世に存在しないのと同じこと。まず、こうした本があることを知ってもらいたいと思い、ご紹介いたします。

2022年4月27日 (水)

『奥入瀬渓流 きのこ ハンドブック』-ご案内

 NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会の河井大輔さんより、『奥入瀬渓流 きのこ ハンドブック 春-初夏編』をいただきましたので、ご案内です。
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 『北海道野鳥図鑑』など、図鑑つくりには定評があり、奥入瀬に入れ込んでいる河井さんが今度は、きのこの図鑑を出しました。樹木はもとよりコケ、シダとくれば、きのこはさけて通れないとはいえ、充実した図鑑となっています。
 開いて驚くのは、きのこの名前が大きく漢字で書かれていることです。平茸あたりはヒラタケはわかります。しかし、漢字で書くとオオワライタケの大笑茸は、おかしいです。ムカシオオミダレダケが昔大乱茸って、なにか凄い名前です。アラゲコベニチャワンダケはカタカナで読むと意味不明ですが、漢字で書くと粗毛小紅茶碗茸となり、載っている写真のイメージで理解できます。
 しょせんカタカナは記号でしかないため、音は伝わってきても意味が伝わりません。それぞれの種には、意味のある名前がついているはずで、漢字で表記することでそれがよくわかり、おかげで名前を覚えられます。なにより、きのこ学者が命名に苦労したことだろうなあと思いながら眺めました。
 もちろん、解説はていねいで、初心者にわかるように語りかけるような文体です。写真も豊富に掲載されています。きのこで困るのは、成長段階で形が変化してしまうことです。それを複数の写真でフォローしてくれます。
 私のフィールドの六義園でも共通種がありそうなので、これからのきのこの季節です。判型は、ポケットに入る大きさなのでお供させたいと思います。

アマゾンで入手可能です。下記URLを参照にしてください。
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%8D%E3%81%AE%E3%81%93%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%88%E6%98%A5%EF%BD%9E%E5%88%9D%E5%A4%8F%EF%BC%89-%E6%B2%B3%E4%BA%95%E5%A4%A7%E8%BC%94/dp/4991108098/ref=sr_1_3?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=GO0CW6RNRLHF&keywords=%E3%81%8D%E3%81%AE%E3%81%93+%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF&qid=1651036231&s=books&sprefix=%E3%81%8D%E3%81%AE%E3%81%93+%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%2Cstripbooks%2C171&sr=1-3

2022年4月24日 (日)

六義園、やっと夏鳥。そしてBirder5月号の紹介

 Portacapture X8(以下、X8)を手に入れたことで、設定を変えての録音を試みています。しかし。このところ夜から朝に雨が多く、ベランダから六義園に向けての録音でさえろくにできません。
 六義園の常連さんたちは、夏鳥が姿を見せてくれないのでいささか消化不良気味。周辺の公園の仲間からは、オオルリはもとよりサンコウチョウまで見つかっているのですから、なんで六義園はこないのということになります。なにしろ、まだアトリやツグミがいたりして鳥的には冬の六義園です。
 ところが、本日の録音ではやっと夏鳥らしい夏鳥が録れました。センダイムシクイとシロハラとの競演です。シロハラは冬鳥ですが、これから北へ渡る途中でしょうか。この2種類がいっしょに鳴き合うのは、この季節の六義園ならではの出会いです。
 X8でマニュアル録音。ボリュームの増幅、低音ノイズの軽減、ノイズリダクションをかけています。

 センダイムシクイのさえずりは、最後の「ビーィ」がしっかりした鳴き方でした。北海道など北日本のものは、この「ビーィ」がないか、頻度が少ない傾向があります。関東地方どまりのセンダイムシクイなのでしょう。
 ところで、紹介が遅れましたが、Birder誌5月号の特集「春の渡りの愉しみかた」に寄稿しました。「声でさがす春の渡り鳥図鑑」です。公園編と干潟田園編で、37種類を解説しています。
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 六義園や日光などの経験から渡りの傾向を解説しています。図鑑には書いていない情報です。また、鳥によっては渡りと途中ならではの鳴き方をするものもいます。こうした希な鳴き方は、ネットでアップされることもありません。「文一AR」で、こうした音声も聞くことができます。
 どうぞ、これから夏鳥たちを歓迎するためにも「Birder 5月号」を参考にしていただければと思います

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