コマドリとタネコマドリの微妙な関係-その2
伊豆諸島のタネコマドリは、渡りをやめてアカヒゲになったコマドリと同じように渡りをやめたものが、分化しつつある途上にあるのではないかというのが、関さんの説です。アカヒゲが種に分化し、それぞれの亜種に別れたのと,氷河期のタイミングと一致するとDNAで証明しました。ようするに100万年単位の時間の流れが必要なことになります。では、タネコマドリはどうなのかというお話しです。
こうした話を日光の大自然を前にコマドリのさえずりを聞きながら、うかがいました。なんとも贅沢な時間でした。
あれからDNA解析と論文まで10年かかっているのですから、たいへんなご苦労があったことと思います。
私としては、両亜種のさえずりの違いが気になりました。『日本野鳥大鑑―鳴き声333』(1996・小学館)では、
「さえずりは、表記すれば「ヒンカラララ」(中西悟堂・1937)となり、ほぼコマドリと同じとなってしまう。蒲谷の収録した三宅島のものは、音にやや濁りがあり、1節が本土のものに比べて短いようである。別の表記では「ピン ツル・・・・」とさえずり、「ピッ ピッツルツー、ピッ ピッツルツーと警戒の声を出すという(下村兼史・1936)。」
と書いています。執筆のおり、なんとか違いを書こうと蒲谷さんの音源を何度も聞きました。苦肉の策の表現です。
ということで、私の録音した鳴き声をアップいたします。
まず。三宅島のタネコマドリです。2006年6月15日、大路池で録音しています。Sony PCM-D1で録音。1.500Hz以下の低音を軽減
しています。
つぎが、日光のコマドリです。2009年6月1日、日光の雲竜渓谷です。雲竜渓谷は、関さんがコマドリのDNAを採取したところです、Sony PCM-D50で録音。ボリュームを合わせるために多少の増幅をしています。2.000Jz以下の低音のノイズを軽減しています。
いかがですか?
聞く限り、また声紋で比較してもそう大きな違いを感じません。
コマドリにも多少のバリエーションがありますので、その範囲に収まってしまうかもしれません。「ヒン、カラカラ」の「ヒン」がタネコマドリのほうが「ツッ」あるいは「チッ」と聞こえますが、これが違いでしょうか。サンブル数が少ない中での比較ですから、推測はここまでにしておきます。
関さんからは「タネコマドリはナゾのmtDNA系統が混じっている一方で、マイクロサテライトで見ると割と最近ではあるけれど本土とは分かれたグループのようです。ナゾmtDNAがどこから来て、なぜ伊豆諸島だけに、しかし小さな島でも保持されているのかは今後の課題です。」とまだまだ、解明の楽しみがあります。
タネコマドリが、アカヒゲのようにコマドリと違ったさえずりをするのは、あと何100万年はかかるのでしょう。こういう話ってロマンがありますよね、ただ野鳥の写真を撮っているだけではなく、鳥のこういったおもしろい話も知ってもらいたいものです。(おわり)
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